カウンセリング3つの壁


「カウンセリング3つの壁」という題で話をしたいと思います。
カウンセリングには、3つの壁があります。(竹内成彦が命名しました。)


まず、ひとつめの壁。
「カウンセリングに行こう。カウンセリングに行きたい。」と思いつつ、 結局カウンセリングに行けないことです。時間的な都合もあるでしょう。経済的な都合もあるでしょう。
でも、多くは、行く勇気がないということではないかと思います。

「カウンセリングに行きたい」と思いながら、行くことができない人を、
私は、「カ ウンセリングのひとつめの壁を越えられない人」と称しています。

 

ふたつめの壁。
カウンセリングに行ったは行ったが、それっきり行かなくなった人のことを指して、私は 「カウンセリングのふたつめの壁を越えられない人」と称しています。 カウンセリングの最大の欠点として、「専門性が感じられない」「即効性がない」があげ られると思います。
これは、多くのカウンセラーが指摘しているところです。 ”専門性が感じられない” カウンセラーと話をしても、特に何も感慨はなく、「これでは 、友人や知人に話しているのと同じだ。」と思うことです。

次に、”即効性がない” ですが、カウンセリングにせっかく勇気を出して行ったものの 、自分自身に何も大きな変化がなく、「カウンセリングってこんなものなのだろうか?」「カ ウンセリングは、自分には効果がないのではないか?」と思うことです。
これらは、ふたつとも大きな誤解であり、勘違いなのですが、カウンセリングに初めて行ったクライエントの2割ぐらいの方が、上に記したような感想を持つのではないでしょ うか。

「専門性が感じられない」「即効性がない」というのは、カウンセリングの持つ大きな特徴であり、大きな欠点だと思います。 「カウンセリングの1回目は、カウンセリングとは呼べない」と言うカウンセラーの方がいます。「1回目は、インテーク面接であって、カウンセリングではない」「1回目は、聞き取り調査であって、カウンセリングではない」と言うのです。私も大きく頷けるところです。

1回目のカウンセリングでは、カウンセラーは、クライアントを大雑把に理解することに努めて、それほど深い話をしようしませんし、時間の関係もあって、実際、深い話ができません。私も、クライアントの話を聞きながら、様々な解釈が頭の中に浮かぶのですが、それを伝えることは、なかなかありません。解釈があっているかどうか、まだわかりませんし、クライアントにその解釈を受けとめるだけの力があるかどうかもわかりません。それで、あえて伝えないのです。それに、1回目では、カウンセラーは、話を聞く ことだけで精一杯で、解釈を伝える時間がないということもあるかと思います。

私のカウンセリングルーム「心の相談室with」では、チケット制を導入していないのですが、この点においては、導入されているカウンセリングルームが非常に羨ましく思います。
何故なら、クライアントが、ふたつめの壁を難なく飛び越して行けるからです。
「じゃあ、心の相談室withでも導入しろよ!」という声が聞こえてきそうですが、
いざ導 入するとなると、クライアントの不信感を招きそうで、やっぱり導入できません。

さて、1回目のカウンセリングが終わった後、私はいつも、クライアントに伝えたいこと 、クライアントに聞いてみたいことで頭がいっぱいになります。でも、それを、伝えることができないことが度々生じます。
カウンセリングルームに初めて訪れた人のうちの約2割の方は、「また来ます」と言ったまま、もう2度と訪れないからです。残念で残念でな らないところです。
こちらが「絶対に通った方がいいのに…」と思われる方に限り、通ってくれないのです。
まれに、1回目のカウンセリングの時、「こうこうこうすれば症状はきれいに消失する」 と、回復過程が想像できることがあります。そういう方とは、次に会うのが非常に楽しみになるのですが、そういう方が、「また来ます」と言ったまま来なくなるのは、とても淋しく辛いことです。

 

さて、見事、ふたつめの壁を飛び越える方がいます。
そう、カウンセリングルームに再び訪れるのです。そういう方は、3回・4回と通うことになります。( もちろん、2回目・3回目で、問題を解消される方もたくさんいらっしゃいます )
ところが、次に、みっつめの大きな壁が訪れます。

みっつめの壁は、クライアントが、「カウンセラーには、もうほとんどのことは話し た。けれど、カウンセラーは何もしてくれない。さらに、私から話を聴こうという態度で接してくる」という感想を持った時に訪れます。

このみっつめの壁は、行動療法や森田療法を行っているクライアントには訪れません。
精神分析的療法・来談者中心療法などを行っている人に訪れる壁です。
この壁も結構深刻です。「どうやって乗り越えるか?」ですが、やがてクライアントは、「何もアドバイスをしようとはしないが、カウンセラーは、私に最大の関心を寄せている。」ということに気がつき始めます。
そして、沈黙に耐えられなくなってきたクライエントは、ついに心で話をし始めます。そう今までは、あらかじめ頭の中で用意してきた頭で話をしているに過ぎなかったのです。

クライエントの防衛機制が取れ、生の感情・無意識の声が聞かれる瞬間です。
ここまで来て、ようやくカウンセリングらしきものになってきたな、と私は思います。

カウンセリングの3つの壁を乗り越えた人(カウンセリングが5回目・6回目を迎えた人)だけが体験できる、カウンセリングの醍醐味なのです。
もちろん、個人差が非常に大きくあります。
1回目、もしくは 3〜4回目で、カウンセリングらしきものになる人、10回目を越えてもカウンセリングらしきものにならない人、様々です。

さて、カウンセリングらしきものを理解できたクライアントは、「結局、問題解決をするのは自分自身なんだ。カウンセラーは、そのお手伝いをするだけなんだ」と理解します。
カウンセラーは、クライアントの自立を促すため、あえて多くの質問やアドバイスをするのを避けます。特に来談者中心療法を使う時はそうです。それが、回復への、遠回りに見える近道なのです。
でも、その心掛けが、クライエントのふたつめの壁を飛び越える意欲(もう1度カウンセリングルームに来ようとする意欲)をそいでいるという指摘は免れません。
このあたりは、非常に心苦しいところです。
ふたつめの壁を飛び越えさせやすいよう、 あまりにも私がサービス(質問・アドバイス)すると、そのクライアントは、カウンセリングというものを誤解し、みっつめの壁を越えられなくなってしまうのです。(「問題解決するのは、自分自身なんだ。カウンセラーは、そのお手伝いをしてくれるに他ならないんだ」という気付きを得られなくなってしまうということ)

「いったい、どんなカウンセリングが最適なカウンセリングなのだろうか?」「どうしたら、もっとクライエントの役に立つことができるのだろうか?」 私はいつも頭を抱えています。

心の相談室withにいらした人の
3割ほどの方が、1回でなんらかの症状を消失させ、悩みを解消し、
2割ほどの方が、カウンセリングとは何なのか? がわからないまま、そして効能を感じることなくカウンセリングルームを去り、
5割ほどの方が、ふたつめの壁も乗り越え、通ってくれます。

ふたつめの壁を乗り越えた人は、8割ぐらいの確率で、みっつめの壁を乗り越えるのに成功します。 みっつめの壁、すなわちカウンセリングに通う回数が5・6回を越えた人は、9割以上( もっと高いと思います)の確率で、症状を消失もしくは悩みを解消させます。

私が、「カウンセリングの成功率は7割ほどです」と、よく言うのは、このような割合からです。( どこのカウンセリングルームでも、成功率は、7割ぐらいです。まれに、「成功率99%」という謳い文句で広告宣伝しているカウンセラーがいますが、そういう方は、 嘘を言っているか、勘違いされているオメデタイ人の、どちらかです)

また、私が、カウンセリング経験者(よそでカウンセリングを経験されたことのある方) を得意とするのは、カウンセリング経験者は、難なく3つの壁を乗り越えてきてくれるか らです。私は、カウンセリング経験者であれば、9割以上の確率で、回復に導けると思 っています。( 例え、その方が、よそで回復されなかった、難しいと言われるクライエン トだったとしても…。)

それにしても、 ここまで書いてきて、返す返す残念なのは、ふたつめの壁を乗り越えなかった人たちへの私の思いです。私の、たくさんの質問・たくさんのアドバイスは、最後まで陽の目を見ることがないまま消えていきます。
 

最後に…、
ひとつめの壁はともかく、(厳密に言えば、カウンセラーの責任ですが…)ふたつめの壁もみっつめの壁も、乗り越えられないのは、クライエントの責任ではありません。それは、カウンセラーの責任です。
私は、カウンセリングの3つの壁を乗り越え、ご卒業されたクライエントのことを心の底から尊敬しています。それは、賞賛に値します。

 


心の金曜日