米空軍特殊部隊
U.S. A F Special Operation Forces






空軍特殊戦軍団
[米空軍特殊部隊 概要]

米国が、アフガニスタン、イラクで相次いで戦争に勝利すると、その戦争に多大な戦果を上げた空軍は
かつてない評価を受ける事となる。 特質すべきは、戦争初期に投入された空軍兵力とそれを支えた空
軍特殊部隊の存在である。空軍特殊部隊は、彼らの標語となっている「ファーストイン・ラストアウト」が
示すように、どの部隊よりも最初に戦線に投入され航空機による最初の空爆を誘導し各種陸海の特殊
部隊の潜入に随伴しサポートしている。 彼らの存在は、第二次大戦後及びベトナム戦争に活躍した事
が伝えられていたが、現在の様な危険な任務ではなく、後方戦線から航空機に爆撃要請や偵察機に搭
乗し標的を選定する任務が主立っていた。 しかし、湾岸戦争後、特にアフガニスタンでは巧妙に偽装し
神出鬼没のゲリラ戦を展開するタリバンを特殊部隊が直接確認し航空機による爆撃によって殲滅する
戦術が多用され絶大な戦果を上げた。2003年のイラク戦争でも空軍特殊部隊員は陸軍・海軍特殊部
隊に派遣され空爆支援任務を遂行するとともに、空軍特殊部隊チームも独自に活動している事が明らか
になっている。

「米空軍特殊部隊創設への布石」
今回は米空軍特殊戦軍(AFSOC)の中でも特殊戦航空機を要する特殊戦航空団の特殊部隊ではなく
陸軍、海軍の特殊部隊と同等の任務を遂行する空軍の特殊部隊に注目する。2001年に発生した米国
同時多発テロによりブッシュ大統領は独自のドクトリンを発表し対テロ戦争を推し進める事となる。 この
国防政策を強力に実行するラムズフェルド国防長官は単なる政治家の枠を飛び越え米国軍のハード・
ソフトに大きな影響を与える政策を推進している。彼曰く、「湾岸戦争時の米軍は、現在の米軍の足元に
も及ばない」が示すように湾岸戦争後の米軍のIT化を中心としたRMA(軍事革命)が、1997年の国防
計画(Quadrennial Defense Review)で顕著になると、兵力は維持したまま戦闘力を向上する事に主眼
が置かれる様になる。特にそれは、特殊部隊で顕著になり、アフガニスタンでは100人のゲリラと10人
の米特殊部隊では、兵力は1/10倍だが、戦闘力は圧倒的な航空兵力を有する米特殊部隊が100倍
と見積もられていた。つまり米国軍は1000人分の戦力を有している事となる。これは、RMAによっても
たらされた米軍の情報の独占と優越、精密誘導爆撃が可能となり、以前では危険だった目標への人間
のセンサーが限りなく接近する事が可能となった為である。

アフガニスタン、イラクで活動した空軍特殊部隊は、開戦初期において空爆をサポートし目標を発見・選
定する重要な任務を遂行し、その活躍が注目を集めた。ラムズフェルド国防長官は今回の戦争で活躍
した空軍戦力と誘導・サポートをした空軍特殊部隊を絶賛しているが、それは彼が提唱する対テロ戦争
に有効な戦術だと認識している為である。実際、空軍特殊部隊は開戦前から敵性地域に先行投入され
ており、その戦闘遂行能力は陸・海特殊部隊と同等の評価を得ている。




[活動内容]

「Pararescuemen(パラシュート降下救難員)」


パラレスキュージャンパー(PJ)は、その名が示す様に隊員にはパラシュート降下資格と医療資格を持
ち合わせた高度なスキルを擁する部隊で、以前は救難作戦に従事されていると考えられてきたが、湾
岸戦争後特にアフガニスタン、イラクではPJ隊員による空軍特殊部隊がチームを編成し救難作戦以外
にも特殊作戦に従事している事が公になった。救難作戦はあらゆる作戦の中でも最も難易度の高い作
戦の一つであるが、その作戦を遂行する事になるPJは他の特殊部隊と同等の戦闘力を保持する事は
必然となる。実際イラク等では彼らの高い戦闘能力が実証されている。



パラレスキュージャンパー(PJ)、彼らの主任務は
CSAR(戦闘捜索救難)だけではない高い作戦遂
行能力を併せ持っている。


フォート・ベニング(ジョージア)基地にある都市市街
戦模擬訓練センターでCSAR訓練を行うPJチーム。


PJはどの様な状況下でも救難活動を行えるポテン
シャルを要求される。画像は海上に不時着した航
空機パイロットを救助する、海上捜索救難(S-SA
R)訓練。


PJは時として作戦運用上、敵性支配域に投入され
る為高い戦闘能力を有する。


2003年イラク・バクダッド国際空港を占拠する為
に投入されたPJ強行偵察チーム。 彼らは6人編
成でチームを組み特殊部隊と同じ任務をこなして
いる。彼らの詳細、作戦内容、潜入方法は不明だ
が米空軍HP上で紹介されている。






「Combat Search and Rescue units」(戦闘捜索救難隊)
CSAR(戦闘捜索救難)部隊は、自軍兵士の救難作戦を行う専門部隊で通常の捜索救難(SAR)とは
違い、敵支配地域での活動が要求される。上述のPJと任務が重複するが、航空戦闘司令部(ACC)
の指揮下で活動しPJとは指揮系統が異なる。CSAR部隊は、敵支配地域で撃墜され脱出したパイロ
ット等を救出するのが主任務の為、高度な戦闘能力を有するが装備面で任務を遂行できるか空軍内
部でも疑問視されている。






「Combat Controller(戦闘管制員)」
CCTは、第二次世界大戦からベトナム戦争まで活躍したForward Air Controller :FAC (前線航空管制
員)を特殊作戦にも従事出来るように訓練した部隊で、陸軍・海軍特殊部隊に要員を派遣するとともに
CCTでも独自に特殊部隊を編成し作戦に従事している。FACの歴史は、第二次世界大戦中に行われ
た空挺作戦が、予定された降下地点を大きく外れ作戦が失敗に終ったのを教訓に、空挺部隊を搭載し
た輸送機に先行してバスファインダー(Pathfinders)と呼ばれる照明弾投下飛行機にFASを搭乗させ
正確に降下地点に信号弾を投下し後続輸送機部隊に降下地点を知らせる任務が主で、1943年9月
にイタリアに降下した米第82空挺師団はFASによって正確に降下地点に誘導されている。 1944年
6月にはノルマンディー上陸作戦で米英・フランス・ポーランドの空挺部隊を誘導し、1944年9月には
英軍モントゴメリー将軍指揮の下「マーケット・ガーデン作戦」で米第101空挺師団がFASの誘導によ
り降下している。FASは、その後も空軍航空機の爆撃支援任務も付与され、ベトナム戦争後には特殊
部隊に随伴し、より迅速で正確な爆撃支援を要請するとともに、米軍の軍事作戦では最初に投入され
空挺・ヘリボーン部隊の降着地点を選定し誘導する重要な任務に従事している。1970年代後半より特
殊部隊による極秘作戦が行われると、FASにも特殊部隊に随伴できる技能と訓練が要求され戦闘管制
員(CCT)が養成されるようになる。CCTは特殊部隊員と同じ選抜と訓練を受け、航空管制の専門知識
を習得し各特殊部隊の作戦分遣隊(ODA)に1〜2名派遣される。大規模な航空作戦及び空挺・ヘリボ
ーン作戦が行われる場合には、CCTがチームを編成しTactical Air Control Party:TACP(戦術航空管
制斑)として最初に戦線に投入される。特に2001年アフガニスタン空爆ではTACPが大量に投入され
ている。 彼らの戦闘能力は他の特殊部隊と同等を有する事がアフガニスタンで証明されている。また、
2003年イラク戦争でも各特殊部隊にCCT要員を派遣、TACPも活躍し、空軍の特殊部隊としての中心
的な存在に台頭している。

CCTの主な任務は、各種航空機の誘導・高度指示から攻撃目標の偵察・監視・選定、目標の損害判定
(BDA)等を行う。 また戦闘開始前に敵性支配域に投入され、時として特殊部隊の潜入をサポートする
為に先駆けて潜入作戦を行う。その他には、空挺・ヘリボーン部隊の降着地点の選定・誘導、前線簡易
航空基地構築支援を行い、任務達成の為のあらゆる障害を排除する為に戦闘も行う。


(隊員訓練課程)
CCTの教育課程は、まずフェアチャイルド空軍基地(ワシントン)の空軍基礎訓練学校に志願者を集め2
週間の選抜過程を経てさらに2週間の体力・適正試験に合格した者が、ポープ空軍基地(ノースカロライ
ナ)内にあるCCT養成学校へ入校が認められる。CCT養成学校では12週にも及ぶ航空管制のあらゆる
技術習得を行い、同時にランドナビゲーション・格闘・戦闘戦術・爆破技術・パラシュート降下・水中ダイビ
ング等の基礎的な適性・訓練も行う。この過程に合格した者だけが空軍先進特殊作戦戦闘員養成コース
へレベルアップし1年間他の特殊部隊員と同じ過酷な訓練を受ける。この過程を修了した者がCCTとして
認められるが、その後さらにキーウェスト島にある陸軍戦闘ダイバー資格コースを4週間受け水中潜入作
戦に必要な技術を習得する。ペンサコラ海軍航空基地(フロリダ)では、1日水中に墜落した航空機から脱
出する訓練を受ける。最後に陸軍のフォートブラッグ(ノースカロライナ.)基地にて自由落下落下傘学校で
HALO資格を取得し訓練を終了する。CCT隊員には赤いベレー帽が支給され彼らのトレードマークとなっ
ている。



CCT隊員 赤いベレー帽が彼らのトレードマーク


空挺部隊の降下訓練を誘導支援するCCT隊員


CCT隊員の全備装備一覧


CCT隊員には、あらゆる環境下での作戦遂行能
力が問われる為、その養成課程は他の特殊部隊
員と同じである。 画像はHALO降下するCCT訓
練生。


水陸両用訓練中のCCT訓練生。晴れてCCT隊員
となると、航空管制の専門家として1〜2名他の特
殊部隊の作戦分遣隊(ODA)に派遣される。


前線簡易航空基地でC−130戦術輸送機を誘導
するCCT隊員。


戦闘管制班(Combat Controller Team)は、通常
3〜6名でチームを編成するが、大規模な航空
作戦及び空挺・ヘリボーン作戦では6名編成の
戦術航空管制斑(Tactical Air Control Party)が
先行して投入される。TACPには、今後偵察型U
ACV(無人攻撃機)が導入される予定で、対テロ
戦において、タイムラグのない攻撃が行えると期
待されている。


ジェネラルダイナミック社がCCT向けに開発した
携帯情報端末、TACP-M。CCT隊員が必要な
航空管制情報をAWACS(早期警戒管制機)・
J-STARS(地上目標監視機)等から交信・取
得できる。


アフガニスタンで空爆支援を行うCCT隊員。


CCTの高い戦闘力はアフガニスタンで実証され
対テロ戦争で有効な戦術とみなされた。空軍で
は今後大量のCCT隊員の養成を行う方針であ
る。


2003年イラクバクダッドにて空爆が行われた地
域の損害状況を調査中のCCT隊員。米空軍HP
より






「Combat Weathermen Team」(戦闘気象観測班)
戦闘気象観測班(CWT)は空軍が行う航空作戦において必要な気象データーを収集する事が主な任務
で、第二次世界大戦中の各軍で編成された気象観測分遣隊が前進となって今日に至っている。 特に湾
岸戦争後空軍の空爆で使用される精密誘導爆弾は天候に左右される場合がある為CWTの重要度は高
まっている。 最近の精密誘導兵器でレーザーが使用される物は現場の天候のデーターによって命中精
度に誤差が生じる為CWTが現場のデーター取得の為派遣される。派遣される場所はこれから航空攻撃
が行われる場所なので必然的に敵勢力内に投入され、緊急時には戦闘も行われる。部隊はPJ(パラジ
ャンパー)、CCT(戦闘管制員)と同じく米空軍特殊戦軍司令部(AFSOC)のあるハールバート・フィール
ド(フロリダ)基地内の第720特殊戦術軍、第10戦闘気象観測中隊(10th Combat Weather Squadron)
として活動している。


・第10戦闘気象観測中隊(10th Combat Weather Squadron)ハールバート・フィールド(フロリダ)に駐屯
        空軍特殊戦軍司令部(AFSOC)・陸軍特殊部隊軍団司令部(ASFC)及び第3・第7特殊部
        隊群(3rd・7th SFG)をサポート

・第1分遣隊 フォート・ルイス(ワシントン)に派遣
        陸軍第1特殊部隊群(1st SFG)をサポート

・第2分遣隊 フォート・キャンベル(ケンタッキー)に派遣
        陸軍第5特殊部隊群(5th SFG)、第160特殊戦航空連隊(160thSOAR)をサポート

・第3分遣隊 フォート・カーソン(コロラド)に派遣
        陸軍第10特殊部隊群(10th SFG)をサポート

・第4分遣隊 フォート・ベニング(ジョージア)に派遣
        陸軍第75レンジャー連隊(75th Ranger Regiment)をサポート

・第5分遣隊 フォート・ブラッグ(ノースカロライナ)に派遣
        陸軍第3特殊部隊群(3rd SFG)をサポート

・前方観測所 アルファ分遣隊(OL−A) ハンターAAF
        第1レンジャー大隊(1st RB)をサポート

・前方観測所 アルファ分遣隊(OL−A) 嘉手納空軍基地・トリイ通信基地(日本)
        第320特殊戦術中隊(320th STS)をサポート

・前方観測所 アルファ分遣隊(OL−A) ミルデンホール(英国)
        第321特殊戦術中隊(321st STS)をサポート




CWT隊員 胸章には野戦部隊章が付けられてい
る。


バルーンを使用して各種気象データーを収集中
のCWT隊員。


CWTの観測した最前線のデーターは、米空軍が
運用する軍事気象衛星データーでも得られない
貴重な生きた情報となる場合もある。


CWTのもたらす気象データーは時として作戦全
体の成否を握る事もある。






■「U.S.Air Force Special Tactics Units」(米空軍特別戦術部隊)
特別戦術部隊(AFSTU)は、1977年に空軍内に極秘に設置された打撃専門の純軍事的特殊作戦部
隊(SOF)で、その実態は謎のベールに包まれている。隊員は、パラレスキュージャンパー(PJ)と戦闘
管制員(CCT)より選抜し編成されているようで、他の特殊部隊と同じ過酷な養成過程を経ている。 彼
らがCCT或いはCCTの作戦部隊、戦術航空管制斑(TACP)とどのような任務区分があるのかは明ら
かになっていないが、2001年のアフガニスタンでは、特別戦術部隊は陸軍特殊部隊第5特殊部隊群
(グリーンベレー)・デルタフォースとともに対ゲリラ戦闘に投入されている。 AFSTUは,、専門の近接航
空支援(CAS)を駆使して発見したゲリラ勢力を、AC−130H/U (スペクター・ガンシップ)、F−117
A ナイトホーク ステルス戦闘攻撃機,、F−15E ストライクイーグル等で殲滅する戦術を多用している。
特筆すべきは、JDAM(GPS誘導)やレーザー誘導爆弾の進化により命中誤差(CEP)が数m〜数十
mとなるとB−52・Bー1B・B−2Aステルス爆撃機のような重爆撃機が近接航空支援(CAS)に有効
だと立証され、AFSTUの戦闘力が飛躍的に向上するとともに、かれらの重要性がますます高まる事に
なる。 また、アフガニスタン・トラボラ地区でのアルカイダ掃討作戦「アナコンダ作戦」では第10山岳師
団(陸軍)や海兵隊の遠征部隊(MEU)・遠征旅団(MEB)のヘリボーン作戦を適切に誘導し作戦を円
滑に進めているが、これはAFSTUの情報収集活動が優れている事でゲリラ勢力の行動を詳細に把握
できたからに他ならない。



AFSTUは、米空軍特殊戦軍(AFSOC)の隷下
に特別戦術中隊対策司令本部が設置されPJ
隊員・CCT隊員から選抜された6名から編成さ
れる。


AFSTU隊員が携行する近接航空支援用レ
ーザー照射目標指示器SOFLAM


アフガニスタン・カンダハルにて海兵隊の前線
航空管制員(Forward Air Controller)同じく
SOFLAMを使用している。


アフガニスタンで活動中の特殊部隊員を撮影し
た有名な画像。彼らは当初陸軍の特殊部隊員
と見られていたが、その後AFSTU隊員だと判
明している。


偵察衛星やUAVの進化は著しいが間接的偵察
手段がどんなに発達しても人間による直接的偵
察手段が有効な事を対テロ戦争で実証して見
せた。今後も米軍は対テロ戦争の先兵として各
種特殊部隊を大量に大規模に投入し、しかも躊
躇なく作戦を敢行する。画像はアフガニスタンで
活動中のAFSTU隊員。彼らの腕章には空軍マ
ークが貼られている。





Produced  by Mirage




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