RAH−66 コマンチ ステルス武装偵察ヘリ ボーイング/シコルスキー 


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RAH−66 コマンチ
■概要
RAH−66コマンチは、アメリカ陸軍が、RMA(軍事革命)による21世紀のハイテク・デジタル戦場を想定
して導入を予定しているステルス武装ヘリで、スピードと運動能力を重視した高機動性、偵察任務を遂行
できる夜間低空侵入能力と低騒音性、それにステルス性を付与し、アパッチに匹敵する攻撃力と武器搭載
能力を兼ね備えており、これらを統合的に運用する最新のアヴィオニクスを搭載した次世代の偵察攻撃
ヘリコプターである。

*)2004年2月23日 米国防総省及び米陸軍省発表
RAH−66コマンチは、計画の中止が決定し、現在開発中のスケジュールは今年度をもって終了する。
米陸軍では、RAH−66コマンチに計上する予定だった予算140億ドルをUAV(無人航空機)及び
UCAV(無人戦闘航空機)開発計画に投入するとしている。→無人攻撃兵器
また、現在運用中のAH−64D アパッチ・ロングボウでは、UAVの遠隔操作機能とデーターリンク機能
を持たせたペア戦術が取り入れられた最新型が開発中でD型アパッチ・ロングボウBlockIIIが配備され
る予定となっている。RAH−66が担う強襲偵察任務は、無人のUAVもしくはUCAVが受け持つ事となる
とみられている。→AH−64D アパッチ・ロングボウ                (2004年3月16日追記)


■LH計画開発経緯
RAH−66コマンチは、1980年代中期にアメリカ軍LHX(Light Helicopter X)計画によって開発が開始
されたヘリコプターで当初は攻撃ヘリ「AH−1」、輸送ヘリ「UH−1」、偵察ヘリの「OH−58」をLHX計画
の新機種一機で全てを更新する野心的な計画だったが、輸送ヘリの戦術運用が計画とかけ離れた事に
より代替案が1987年に削除され、偵察と戦闘を兼務するヘリコプターとして開発が進められる事となった。
開発は、ベル社とマクドネルダグラス社のスーパーチームとボーイング社とシコルスキー社のファースト
チームが競合し、1991年4月にファーストチームの案がアメリカ陸軍に採用された。その後、冷戦の終結
に伴なう国防予算削減の影響で開発は中止されたが2機の試作機と6機のプロトタイプの開発が継続され
1996年1月4日に初飛行を成功させた。



■RAH−66解説
偵察・攻撃が主任務の強襲偵察ヘリで80年代より開発されている最新鋭の武装ヘリ。AH−64アパッチ
より一回り小型で任務上、ステルス性と対ヘリ同士の空戦能力に主眼が置かれて開発された経緯がある
為、機体構造及び外環を二次局面で構成され、武装及び降着装置を全て内部引き込み式としている他、
騒音が小さくレーダー断面積(RCS)を極力抑えている。
また、アパッチに匹敵するエンジン出力を有しており良好で俊敏な運動性能を達成している。 武装は便宜
上偵察ヘリとなっているにもかかわらず、攻撃ヘリと同等の武器搭載能力を有しており、ステルス性を損な
うもののスタブウイングを装着すれば強襲打撃任務もこなせる能力を持っている。
また、開発当初より緊急展開能力を考慮して設計された為、良好な整備性と機体の小型化に成功し、大型
輸送機による前線展開力が極めて高く戦闘段階において迅速な運用を可能としている。 コマンチでは、
最新のアヴィオニクスも導入され、任務上欠かせない夜間低空飛行能力は当然として統合型のディス
プレイとHIDSS(ヘルメット統合表示視認システム)で夜間における高い戦闘能力を発揮する事を可能と
している。 コマンチは、この様にアパッチ攻撃ヘリと作戦行動を共有出来る高性能ヘリだが、冷戦終結後
の予算削減の影響で開発は順調には進んでおらず陸軍で運用される時期は早くても2006年頃となって
いたが、2004年2月に正式に開発計画の中止が決定された。
米陸軍で実際に試験された初期量プロトタイプ
3号機。各種飛行テスト及び兵装テストが繰り
返されたが、地上付近でのステルス性は近年
発達著しい新型レーダーやミリ波レーダーの
普及でその効果は疑問視されている。




■機体

・機体構造1

コマンチの機体は、ステルス性を最重視して開発された為レーダー反射断面積(RCS)を極力少なくする
事と目視での発見を避ける為、機体を小さく低く設計されている。しかも、武装を全て機内に搭載する他、
前輪と尾輪の3輪は引き込み式となっている。
従来の攻撃ヘリでは後席パイロット、前席コパイロット/ガナーだったが、コマンチでは機体を低くする為
逆の配置になっている。機体構造も航空機従来のモノコック構造では無く内部ボックスビーム構造を採用
している。これは機体中心に背骨と言うべき主桁を配置し、ここに機体重量の大半の荷重が掛かるように
設計されており、モノコック構造の様に外板にも荷重が掛かる様な事が無い為ウェポンベイを設けて機内
に武器を搭載でき、また外板を開放出来る為良好な整備性を達成できた。

・整備性
コマンチはC−130輸送機に1機、C−17で4機、C−5には8機搭載できて1機あたりの組み立て時間
は20分程度で完了し非常に高い緊急展開能力を実現している。これらは、外版が50%以上解放され
ユニット化された電子機器を少ない工具で整備できる為である。 これにより、コマンチの戦略輸送性が
向上し緊急事態に迅速に対処出来る事となる。

・機体構造2
コマンチでは、機体を極力小さくする為に強度と加工のし易い複合材を多用している。 複合材の多用は
金属製機体と比べると、重量軽減、耐弾性、防錆性、整備性の面で優れており、また墜落時の機体損傷
時にもある程度のダメージを軽減できる。また、当初は電波吸収材の使用も検討されたが地上付近では
波長の大きいレーダーを使用しそのメリットが無い為採用は見合わされた。変わりにレーダーを散乱させる
二次局面で機体を構成しレーダー反射断面積(RCS)をアパッチの1/663、OH−58の1/200まで抑
える事に成功している。

・メインローターブレード
ヘリコプター・ステルス性の弱点とも言うべきメインローターブレードの騒音の問題は、特に注意を払って
制作され、5枚のブレードに先端に後退角を付けた形とし騒音を極力小さくする事に成功した。また、尾部
のローターはファンインフィンの「ファンテール」で尾部機体構造の中にローターを内蔵している。これに
よって騒音を抑え、また尾部ローターの接触事故による墜落事故を減少させる事が出来る。

・エンジン
アリソン/ギャレット社共同開発の型式LHTEC T800−LHT−800 ターボシャフトエンジンを2基搭載
し1334shpの出力を発揮する。これはAH−64アパッチに匹敵する出力で良好な運動性能と400km
台の作戦行動半径を達成している。
また、このエンジンでは、外気を排気に導入し排気温を下げて敵赤外線ホーミングミサイルの追尾を避け
ている。

・その他
NBC(核・生物・化学)兵器対策のためコックピットは密閉式で与圧されており、濾過装置によって機内は
換気されている。今後コマンチではAH−64アパッチが搭載しているAN/APG−78ロングボウ射撃管制
ミリ波レーダーの重量(160kg)を軽減した新型ミリ波レーダーを搭載する予定である。



■操縦系統&アヴィオニクス
コパイロット・ガナー(CPG席)の2つのLCD。
右側が各種戦術情報が表示され、左側には
FLIR(前方監視用赤外線装置)の映像が表示
される。一番右側にはサイクリック・スティック
操縦桿が位置する。

操縦装置は、ヘリとしては初の3重系統のフライ・バイ・ワイヤー方式でサイドスティック型の操縦桿(操縦
席右)とコレクティブ・ピッチレバー(操縦席左)で行い、通常飛行時或いは空中格闘戦以外では、操縦桿
(操縦席右)だけで操縦出来る様になっている。前後の操縦席には2つのLCD(液晶ディスプレイ)が設置
されており、右側は前方監視用赤外線装置(FLIR:Forward Looking Infrared rays)/TVセンサー照準装置
モニター(モノクロ)、左側には各種戦術情報と地図を映し出すカラーモニターがある。
パイロット及びコパイロット/ガナーはHIDSS(ヘルメット統合表示視認システム)を装着し、計器類を見なく
てもヘルメットのバイザー部に映し出される情報でFLIR照準装置でターゲットを捕捉したり飛行情報を確認
できる。これは偵察任務を行うコマンチには重要で機外に視線を向けたまま各種情報を確認しながら飛行
を続けられる。
また、右側の操縦桿はサイクリック・スティックとなっており極端な飛行を行う以外では、グリップを握って
いるだけでミサイルの発射等各種操作を一元的に行えるようになっている。
デジタル・フライトディスプレイを採用し、各種
飛行データーを表示切替可能となっている。
FLIR(前方監視用赤外線装置)で捉えた目標
画像を表示させるLCD。



■運動性能
コマンチの機動性は、その偵察任務上ヘリ同士の空中格闘戦を想定しており、高い運動性能を要求され
ている。まず、メインローター・ブレードはステルス騒音性(隠密性)と運動性能を両立する為にローター
直径を11.9mとした。あまり直径を大きくすると騒音が大きくなるが小さくすると運動性能が損なわれる。
また、エンジンはアリソン/ギャレット社共同開発のT800ターボシャフトエンジンで1334shpを発揮し
AH−64アパッチに匹敵する。この為コマンチは、良好な運動性能を発揮するに至った。飛行速度150
km/hでの急旋回を約4.5秒近くで行い、180度のホバーターンには約4.7秒しか要しないし毎分400
mの垂直上昇能力があり驚異的な運動性能を発揮する。
良好な機動性を発揮するコマンチだが、今後は
UAVがその任務を引き継ぐ事になる。
LHTEC  T800−LHT−800ターボシャフト
エンジン。




■武装
・3銃身20mm機関砲
コマンチの固定武装は、GE/GIATのXM301と呼ばれる3銃身20mm機関砲を使用しており携行弾数
は通常320発で強行偵察時には最大500発を携行できる。また、ステルス性も考慮されており未使用時
には180度旋回し後方ターレット内に収納される。

・ウェポンベイ
主武装は機体左右側面のウェポンベイと呼ばれる開閉式ドアの兵器倉内に全てが収納されており戦闘時
にのみウェポンベイが開き対空ミサイル又は対戦車ミサイル等を発射する。
これは、ステルス性を達成する為に兵器を機体内に収納する為で敵性地域侵入や偵察時には、レーダー
での探知を避ける為にウェポンベイのドアは閉鎖されている。
ウェポンベイの武器搭載能力は、セミ・アクティブ・レーザー(Semi Active Laser)誘導方式AGMー114K
ヘルファイアII対戦車ミサイル叉はミリ波レーダー誘導方式のAGM−114Lロングボウ・ヘルファイア対
戦車ミサイルを左右各3発搭載可能、AIM−92対空ミサイル・スティンガーならば左右各6発搭載可能
である。 その他には2.75インチ・ロケット弾を最大24発搭載可能である。

・スタブウイング
RAH−66コマンチを攻撃ヘリとして運用する場合には、ステルス性は犠牲となるが胴体にスタブウイング
(固定翼)を装着し、さらに武装を搭載可能である。 その場合AGMー114対戦車ミサイル・ヘルファイア
ならば左右各4発搭載可能、AIM−92対空ミサイル・スティンガーならば左右各6発搭載可能である。
つまりスタブウイング装着時は、ウェポンベイの搭載兵器と合わせればヘルファイアならば最大14発、
スティンガーならば最大24発搭載可能である。 これはアパッチの武器搭載能力とほぼ同等で偵察任務
だけでは無く攻撃ヘリとしてもコマンチは第一級の性能を有する。また、フェリー飛行をする場合はスタブ
ウイングに1703リットル(450ガロン)の増槽を左右各1本づつ搭載でき、その場合は2350km程度を
飛行可能である。
XM301 3銃身20mm機関砲 スタブウィングを装着し、ヘルファイアを搭載



■性能諸元
ボーイング/シコルスキー RAH−66 コマンチ

[機体諸元表]
全長:14.25m(ローター含む) 機体長:12.22m 
全幅:2.04m(最大) 全高:3.39m
主回転翼直径:11.90m テイルローター直径:1.37m
自重:3533kg 総重量:4587kg
アリソン/ギャレット LHTEC  T800−LHT−800 ターボシャフトエンジン
推力:1.334shp×2
燃料容量:984リットル 増槽:1703リットル×2
最大速度:328km/h 最大巡航速度:302km/h
航続距離:2335km(フェリー飛行時増槽付き)
上昇率限度:432m/min

乗員2名 [前席] パイロット [後席] コパイロット/ガナー

[武装]
GE/GIATのXM301 3銃身20mm機関砲×1門 320発〜500発
AGM−114Aヘルファイア (6〜最大14発) 最大射程6800m
2.75インチ・ロケット弾(最大24発) 最大射程8000m
AAMスティンガー(対空用)(12〜最大24発)




US.ARMY
Boeing
SikorskyAircraft
の協力を頂きました(順不同敬称略)

Produced by Mirage


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