日本 陸上自衛隊 90式主力戦車


防衛庁・陸上自衛隊HPより

平成14年度富士火力の90式主力戦車



Japan SelfーDefense−Force Type90MBT 陸上自衛隊 90式主力戦車
[車体]
全長:9.755m(120mm砲含む) 車体長:7.5m 
全幅:3.40m(スカート付) 
全高:3.045m(環境センサー含む) 2.335m(標準姿勢車高時/砲塔上面) 
底面高:0.45m(標準姿勢時) 0.2〜0.8mで車高調整可能 
履帯幅:600mm 接地長:4.55m 接地圧:0.89kg/cu
戦闘重量:50t(全備) 
乗員:3名(砲塔右 車長、砲塔左 砲手、車体前部 操縦手)

路上最高速度:70km/h 40km/h(後退時) 登坂力:60% 超提高:1m 超壕幅:2.7m
路上航続距離:390km(最大)
三菱10ZG32WT型2ストロークV10気筒・ディーゼル・水冷 スーパーチャージ
出力:1500hp/2400rpm 搭載燃料:1075リットル
懸架方式:ハイブリッド方式・油圧アクティブ(1・2・5・6転輪)&トーションバーSP(3・4転輪)

[武装]
120mm滑空砲×1    120mm徹甲弾×34発
12.7mm機関銃×1   12.7mm弾×1000発
7.62mm機関銃×1   
4連装発煙弾発射機×2  発煙弾×32発
120mm滑空砲 有効射程距離:3400m 装甲貫通力:914mm





■[TK−X MBT(メイン・バトル・タンク)]
90式MBTは西側先進国第三世代MBTとして最高ランクに位置する高性能戦車であるが、開発は防衛庁技術研究
本部を中心に1975年より開始されて、第3次(67年)・第4次(73年)中東戦争の教訓を取り入れて開発が進めら
れる事となる。1977年から防衛庁技術研究本部第4研究所と主契約企業三菱重工が、車体、砲塔、エンジンの各
試作設計が開始される。 主砲は、第三世代MBTの趨勢に習い120mm滑腔砲を採用し日本製鋼所が担当、FCS
(射撃統制装置)は三菱電機・富士通・日本電気(NEC)が担当する事となる。 1980年から試作車両「TK−X」が
2両試作され各種試験が行なわれている。1986年〜88年までに4両が制作され各種試験と並行して富士教導団
で実証テストが繰り返された。 第一次試作車両には日本製鋼所製120mm滑腔砲が搭載されていたが、第二次試
作車両では、ドイツ・ラインメタル社製戦車砲が換装されている。1989年までに評価試験を完了し、同年12月15日
防衛庁装備審査会議で正式に次期主力戦車として陸上自衛隊に採用される事が決定し、1990年8月6日に90式
主力戦車として制式化された。

90式MBTは、我が国の国土風土に合わせて極力コンパクト軽量化が図られ、諸外国MBTに比べて重量で5〜10
t軽量で、車体も数十センチ〜1m弱全長が短く、全高も数十センチ低く設計されており、特に自動装填装置の導入で
砲塔及びバスル(砲塔後部)は、コンパクトで低平にデザインされている。乗車定員も74式の4名から主砲弾装填手
を削減して3名としている。  また起伏に富んだ山河の多い国土に合わせて、74式で先鞭をつけたアクティブ油気圧
懸架装置の一部を受けつでいる。機動力にも重点が置かれ、パワーウェイトレシオは第三世代MBTではトップクラス
の性能を発揮している。


■[主砲・主砲弾]
90式MBTに採用されている120mm滑腔砲は、第一次試作TK−Xでは日本製鋼所製が搭載されていたが、各種
テストの結果長射程での精密射撃に要求基準に欠ける点が露呈し改善が求められたが解消されなかった為、第二
次試作TK−Xでは、独ラインメタル社製RH120 44口径120mm滑腔砲が採用された。RH120は独レオパルト2
米M1エイブラムス戦車等に採用されている高品質・高性能戦車砲で、90式では日本製鋼所でライセンス生産され
たものが搭載されている。砲身には、太陽光で砲身上部部分が熱せられるのを防止する為サーマル・スリーブが装
着されており命中精度の誤差を抑制している。
主砲の俯仰角は、仰角が+10度で俯角がー7度だが、90式MBTにはハイブリッドタイプの油気圧式懸架装置の
採用で車高の前後が変換でき、これにより+−5度の姿勢変換が可能で、合わせて+15〜−12度主砲俯仰角が
可動可能となっている。主砲弾は2種類で翼安定装弾筒付徹甲弾(APFSDS)と多目的成形炸薬弾(HEAT-MP)
で前者は対戦車戦闘において、後者は対戦車戦闘から対物・対人・軽装甲戦闘に幅広く使用される。
APFSDS弾は高速で打ち出される初速1650m/sを利用した運動エネルギー弾で、長くて(L)細い(D)ほど侵徹力
が増すとされる。L/D値は現在20〜30に達するとされ、また使用される金属は密度の高い金属が使用され、日本
ではタングステン合金が弾芯に使用されている。米国のM1A1/A2MBTでは、タングステン合金より密度が高いチ
タン(Ti)と劣化ウラニウムを使用した劣化ウラニウム合金弾(DU弾)が使用されている。DU弾は射距離2000mで
弾着が装甲に対して水平(90度)で均質圧延防弾鋼板710mmを貫徹したデーターが公表されているが、タングス
テン合金はDU弾に対して7〜10%劣るので、このデーターを参考に、これに近い値の性能を発揮出来ると推察でき
る。



■[自動装填装置]
90式MBTの最大の特長ともなっているのは、西側先進諸国MBTとして初めて主砲弾自動装填装置を採用した事で
旧ソ連ではT−72/80/90等でドラム・マガジン方式が採用されている。 西側では、フランスのルクレールMBTで9
0式の後に採用されている。 90式MBTの自動装填装置は、ベルト・マガジン方式で、主砲弾を砲塔バスル内に水平
に上下2段で16発収納し、砲身砲尾までスライドして装填される物で、主砲弾発射から次弾装填・撃発まで4秒で完
了し毎分15発発射可能で、旧ソ連製のT−72の毎分4発を大きく上回るシステムとなっている。
ベルト・マガジン方式を採用する90式MBTでは、主砲に予め1発の主砲弾を装填し砲塔バスルの弾倉内に16発収
納されるが、その他に車体前部の弾庫には15〜17発収納されており合計で32〜34発の主砲弾を携行する。自動
装填装置の弾倉を使い切ると、車体前部の弾庫から人力で砲塔バスル上部左側のパネルから再装填されるが、1発
約2分の所要時間を要する。砲塔バスル内の自動装填装置及び弾庫は被弾によって誘爆する恐れがある為、乗員の
生存性を確保する為戦闘室と弾庫には隔壁と消化装置も併設されており、バスル上部には誘爆の爆風を上部に指向
させるブロウアウトパネルが設置されている。
尚この自動装填システムには、装填する際の弾種を予め入力する事によって戦闘中にAPFSDS弾とHEAT弾をスイ
ッチにより瞬時に選択装填可能である。自動装填システムの採用により装填手が不要になった為、乗員が74式戦車
の4名から3名に減っており、これによって砲塔の小型化が達成され砲塔バスルも携行弾数ギリギリの16発に抑えて
コンパクト化が考慮されている。統計的に最も被弾率の高い砲塔を小型化する事は中東戦争の戦訓から導き出されて
おり、90式MBTの生存性を飛躍的に高める事に貢献している。
自動装填システムの採用は、諸外国では依然慎重な姿勢が多数を占めているが、これはシステムの故障が発生した
場合の対処が困難な点が挙げられる。瞬時の判断の誤りが明暗を分ける戦車戦において信頼性の欠如は生存性に
直結するからであるが、90式では当初15%の故障発生率を現在では5%以下までに改善されている。5%台の故障
発生率は賛否両論だが、1回の戦闘交戦(自動装填装置のマガジン装弾数16発+1発)で1発の装填不良も起こさな
い確率から影響は少なと判断されている。それより、自動装填装置の採用によって乗員を4名から3名にした事は、砲
塔の小型化に寄与しているメリットが大きい。将来的にも自動装填装置を採用したメリットは大きく、第4世代MBTを検
討している日本を含めた各国は、140mm砲の採用を検討しており、ここまでくるともはや人力での装填は不可能とな
り、主砲弾装填には機械式に頼らざろう得なくなる。もともと欧米人に比べて体格に劣る日本人には120mm砲弾の
装填にも難点があり、先行して導入した経緯があるが、将来的には大きなアドバンテージとなる事は間違いないと思わ
れる。



■[FCS射撃統制装置]
三菱電機・富士通・日本電気(NEC)が担当したFCS(射撃統制装置)の開発は、日本のハイテク技術が注がれ第
三世代MBTで最も完成されたFCSの評価を受けている。中核となる射撃統制デジタル・コンピューターは、集中制
御方式で各種センサーからのデーター処理から弾道計算及び主砲の俯仰角や砲塔の旋回角を制御する。各種セン
サーは、車体・砲塔ジャイロセンサー、砲塔旋回角センサー、砲身高低角センサー・砲耳傾斜計と外部に設置された
砲塔後部に風向及び気温を観測する環境センサー、太陽光等によって砲身が歪んだ値を検出するセンサー
、車体の傾斜角を検出する傾斜センサーが弾道計算コンピューターに送信される。実際の射撃には砲塔上部左側に
位置する砲手用照準器(10倍)内にレーザー測距装置LRF(laser rangefinder)が組み込まれており正確なターゲッ
トまでの距離を自動入力又は手動でデーター入力される。74式ではルビー・レーザーを使用していたが、人道上の
観点から、90式ではYAG(イットリウム・アルミ・ガーネット)アイセーフ・レーザーが使用されている。車長にも独立し
たパノラマ式照準用ペリスコープ(3〜10倍)が装備され左右90度旋回する。90式には、前方赤外線映像装置(F
LIR)が装備されており、車長及び砲手にそれぞれモニターが配置され、夜間戦闘でも的確な索敵能力と精密射撃
が可能となっている。車長は、砲手の照準ターゲットをオーバーライドして自ら別のターゲットを照準可能で緊急事態
や側面・後背に突如出現した新たなターゲットに対して迅速な対応を可能として生存性を向上させている。
前方赤外線映像装置(FLIR)には、ターゲットを自動追尾する機能が装備され、主砲と砲塔が2軸安定化(スタビライ
ズ)されて正確な射撃を可能としている。この移動しながら、移動するターゲットを捕捉・射撃する行進間射撃は、トラ
ンスミッション側アウトプットシャフトからの車速センサーとレーザー測距装置LRF(laser rangefinder)の距離データー
、前方赤外線映像装置(FLIR)の自動追尾ロック機能がFCS(射撃統制装置)で統合され、主砲の俯仰角や砲塔の
旋回角を制御する電気モーター・スタビライザーに指令を出している。90式の行進間射撃での初弾命中精度は驚異
的で、諸外国第三世代MBTの中でも最も精度の高いシステムと海外での評価が高い。

     1.44口径120mm滑腔砲
     2.車長用ペリスコープ(車外視察用照準装置)
     3.照射レーザー波検知器
     4.12.7mm車載重機関銃(軽装甲車両・対人・対空用)
     5.砲手用直視照準眼鏡装置
     6.同軸7.62mm機関銃
     7.砲手用照準装置(レーザー測距装置・夜間暗視赤外線装置)
     8.砲塔前面複合装甲
     (注)平成13年撮影




米シアトル近郊ヤキマ演習場で行進間射撃を行なう90式主力戦車
防衛庁・陸上自衛隊HPより


■[主装甲・複合装甲]
西側第三世代MBTに標準装備されるようになった複合装甲だが、90式MBTも複合装甲を採用している。90式MBT
の複合装甲の開発は、三菱重工と三菱金属(現三菱マテリアル)、京都セラミックス(現京セラ)で共同開発された。
当初、英国のチョパム・アーマーの採用を検討していた防衛庁側の意向を覆して国産複合装甲の開発に踏み切った。
諸外国第三世代MBTは概ね50〜60t級の重量を誇るが、90式MBTは50tと他に比べ軽量となっている。これは我
が国の国土風土を考慮した事だが、その分装甲を薄くして重量を軽減したと認識されている。 90式MBTの複合装甲
は確かに他国のMBTに比べて薄くて軽量だが防御力は第一級の性能を誇っており、120mm砲APFSDS弾至近射
撃実験
(*1)では良好な結果が得られたとの事。米国防省もこの90式の複合装甲に付いて技術提供を望んだ時期もあ
ったほどである。 他国も同様だが、90式MBTの複合装甲も謎のベールに包まれており詳細は不明だが、チタンと特
殊セラミックスで構成されているとみられている。
複合装甲に装着されているセラミックスは、微細な結晶構造で極めて高硬度・高強度で優れた耐衝撃性を持った超微
粒子超硬ファインセラミックスで、チタン系のサーメット
(*2)が使用されている。この超微粒子超硬ファインセラミックスは
ビッカース硬度(*3)に優れヤング率
(*4)が高い、さらに破壊靭性(*5)が高く、特にHEAT弾のメタルジェットによるクラック
発生の進行速度が遅い為、高い対抗性を持っている。その他に同じく高硬度ファインセラミックスの炭化珪素が積層され
全体的な構造は超微粒子超硬ファインセラミックスを高純度チタン粉末(スポンジファイン)を焼結させ特殊処理された二
硼化チタン(TiB2)等の特殊チタン合金が挟み込むようにハニカム(蜂の巣)構造となっている。
90式MBTの複合装甲は120mm滑腔砲で発射されるAPFSDS弾の侵徹体穿孔力を抑止すると言うより、APFSDS
弾の特徴とも言うべき細くて長いほど装甲貫徹力が増大するのを逆手に取り、細い侵徹体を折る或いは曲げる事により
莫大な運動エネルギーを減衰させる事を目的としている。 その為、諸外国MBTの装甲厚に比べて薄いと言われる90
式MBTだが、その装甲防御力は世界でもトップレベルの性能を有し運動エネルギー弾・成形炸薬弾双方に対して有効
な防御力を発揮する。
その複合装甲の管理は厳重で、表面にはキャンパスシートで覆われており、外観から材質を推測される事を防止してい
る。複合装甲の装着は被弾率の最も高い砲塔前面及び前部側面と車体前面に施されており、垂直なデザインで構成さ
れており、ドイツのレオパルト2MBTと酷似しているデザインとなっている。当初垂直に切り立った複合装甲は避弾経始
を無視したデザインと酷評されたが、これは戦車砲が滑腔砲となって初速が高速化した事により、もはや装甲の傾斜だ
けでは砲弾を滑らせて弾かせる効果は期待できない事を物語っている。

(*1) 至近射撃実験:90式MBTの複合装甲開発の為の至近射撃実験は、未確認情報として戦車本体ではなく複合装
   甲試料に120mm滑腔砲APFSDS弾を数百mの距離から撃ち込んだもので、砲弾に対してかなりの耐弾性を示
   したとの事だった。APFSDS弾は、発射される際安定翼が付けられたダーツ状の主砲弾と主砲弾を滑腔砲内で滑
   らせる役目を果たすサボ(緊塞環スリーブ)と呼ばれる装弾筒を空気抵抗で分離させる為、極至近距離で行なうと装
   弾筒も試料に当たるので、その距離は主砲弾と装弾筒が分離後、装弾筒が失速する200〜300mと推察できる。
   尚1986年から試作された第二次試作車両の内1両を実際に射撃して耐弾性をテストした結果も報告されている。

(*2) サーメット:サーメット(Cermet)はセラミックス(Ceramics)とメタル(Metal)の造語で、金属の炭化物や窒化物など
   硬質化合物の粉末を金属を結合材として焼結した複合材料。

(*3) ビッカース硬度:ダイヤモンドの圧子(ビッカース圧子)を圧入する事でその物の硬さを測定でき、その時に発生したク
   ラックの長さを測定することで破壊靭性値(Fracture Toughness)も同時に測定する。

(*4) ヤング率:金属等に負荷をかけた時の伸びと力の関係から求められる定数で曲げ剛性、たわみ剛性とも呼ばれる。

(*5) 破壊靭性:金属等の材料に外部からの負荷(力)が加わって、クラック(亀裂)が発生した時の、その発生速度に対し
   ての抵抗を示したものが破壊靭性で、値が高いとその材料は脆性破壊が起き難く、値が小さいとその材料は脆いと
   言う事が出来る。


[車体]
90式MBTの車体で特長の一つに挙げられるのが、ハイブリッドタイプの油気圧式懸架装置(サスペンション)の採用で
、74式戦車でも採用された懸架装置である。 我が国の国土は、山地混在の起伏に富んだ地形である事と、専守防衛
に徹する防衛戦略によって迎撃・待ち伏せ等が主体となる作戦において優位に地形を利用する事に主眼が置かれてお
り、74式では車体を前後、左右、上下の姿勢変換が可能となっている。 90式では、74式より転輪で1つ多い6個のう
ち第1・2・5・6が油気圧式で、第3・4転輪がトーションバー(捻り反発棒)式サスペンション仕様となっている。 また90
式MBTでは、上下・前後の姿勢変換は受け継がれたが、左右の姿勢変換は仕様から外されている。 車体を水平に維
持する事が目的の左右姿勢制御は、車体が傾斜時に射撃を行なうと重力の影響で砲弾が直進しない為だが、高度なF
CSを搭載されている90式MBTでは、コンピューターが補正修正する為必要が無くなっている。
トーションバーSPの第3・4転輪は、重心直下の為その間隔を狭くセッティングされており、高速走行時の振幅を抑止し
不整地での走行安定性を確保している。また油気圧式アクティブサスペンションで車高を下げられる事は実戦での被発
見率を抑止する事が出来、生存性を高める事にもなる。
自動装填装置やハイテクFCS、ハイブリッド式油気圧懸架装置等が兎角注目されがちだが、90式MBTの最大の特長
がその機動性にあるといっても過言ではない。 我が国の国土と専守防衛を鑑み90式MBTの開発は、戦場又は作戦に
おいての戦術機動を最重要視しており、特に障害・路外踏破能力に重点が置かれている。 諸外国第三世代MBTで最
軽量クラスを誇る重量50tで、出力重力比パワーウェイトレシオは30hp/tと最高レベルを活かした加速力は強烈で、敵
戦車及び歩兵の対戦車攻撃のレーザー照射では検知センサーで警報が発せられると俊敏な加速力を駆使して回避機
動を行なえる。その高機動性を発揮するパワーユニットが、三菱重工製10ZG32WTで2ストローク・水冷V型10気筒デ
ィーゼルエンジンで、低速域では機械式スーパーチャージャーで、高速域では排気圧を利用したターボ・チャージャーで
過給を行なってリアクションタイムの無い機動性を発揮している。10ZG32WTは1500Hpで、これは第三世代MBTで
最高レベルで信頼性が高く前線でのメンテナンスも簡便である。トランスミッションも三菱重工製のMT1500でトルク・コ
ンバータータイプの自動変速機で、通常はトルクコンバーターを介して駆動力が伝達されるが、オーバードライブ時(トップ
ギア)にはロックアップ機能が働き駆動力は直接クラッチを介して直結し伝達される為燃費が向上し動力損失が抑えられ
てトルクアップとなる。ギアは前進4段、後進2段となっている。
その他には、NBC対策(核・生物・化学)として車体中央両側面に装備されたエアーインテーク・グリルより吸入された空
気は専用の特殊フィルターによって浄化され3名の乗員に直接エアーダクトを通して吸入されるもので、万が一の際に乗
員の生存性が考慮されている。 特殊装備として渡河能力も付与されており、シュノーケルを装着すれば約2mの潜水渡
河能力を持つ。


[アップグレード90式改&次期主力戦車]
防衛庁は、90式の後継として次期主力新戦車の開発を新中期防衛整備計画(平成13〜17年度)の中で謳っており、
今後大量に現用の74式戦車が耐用年数を迎える為、新戦車の開発に着手するとしている。90式MBTはすでに導入
されて14年、本格的に運用され始めてから11年が経ったが、一度も近代化改修が行なわれておらず、世界のMBT
進歩に遅れを取り始めている。その最も大きな要因は、指揮・統制・通信・コンピューター・情報のC4I(Command,Cont
rol,Communication,Computer,and Intelligence)が導入されていない事である。近年先進国第三世代MBTは、米国の
M1A2エイブラムスやフランスのルクレールに代表されるように、ベトロニクス(バトルタンクとエレクトロニクスの造語)
に特化した第3.5世代MBTを導入し始めており、先のイラク戦争(2003年)ではその威力を世界に知らしめた。 その
戦闘交戦能力は戦力を増強しないでも、情報を共有する事によって大幅に戦闘力を向上させるものであった。第三世代
MBTとしては充分な90式MBTでも、高度なベトロニクスを導入した最新のMBTとの差は大きく、防衛庁も今後開発さ
れる次期主力戦車には、世界の趨勢に習った新機軸を盛り込むとしている。

(アップグレード90式改)
1990年に陸上自衛隊の主力戦
車となってから14年が経っているが、数の上では74式がまだ多いのが現状で、90式の毎年調達数が17〜18両
(*1)
が起因している。2003年度までには259両しか配備されておらず、調達コストが8億9000万円(*2)となっているが、
これは大量生産配備によって調達コストを下げている米国のM1A2(*3)と何かと比較されてしまう為で、英仏独のMBT
は10億円以上している。これらを考慮すると決してコスト高(*4)とは言えず、問題なのは年間の調達数である。今後随
時退役する74式の数より、90式の調達数が上回っていれば問題は無いのだろうが、年間の調達数が20両弱ではあ
まりにも少なすぎる。今後日本に対する大規模な侵略が考えにくいと言う事も起因しているが、ある程度の戦車戦力の
保持は戦争の抑止効果も期待出来るので現有の戦力は最低限保持すべきである。新型主力戦車の完成は未定だが、
現有の戦車戦力のまま戦闘力を飛躍的に高める事の出来るC4Iを柱とした車両間情報データーリンクシステムを導入し
モジュール増加装甲による装甲防御力の更なる強化、現有の44口径120mm砲をより長砲身の55口径に換装し火力
の充実を図るものとする。細部の変更点も以前から問題点に上げられていた車長用ペリスコープの視界の確保を改善す
る事も上げられる。

(*1)90式戦車の調達数 平成14年度18両、平成15年度17両
(*2)2000年時点での調達価格 価格が高いのではなく調達数があまりにも少ない事によってコストダウンが出来ずに
   コストが高騰する悪循環が問題
(*3)米国2000年度において調達数は年間120両 調達費は1両あたり7億4000万円(1ドル120円換算)
(*4)90式は最新のベトロニクスを装備していないので、その分コストが安いという事も言える


(次期主力戦車)
防衛庁は、防衛大綱で整備する戦車戦力を約900両とし、新中期防衛整備計画にて新型第4世代主力戦車を開発す
るとしている。現有の諸外国第三世代MBTが近代化改修をして、当面の世界情勢に対応しようとしているのとは大分
違う政策である。 現有の90式MBTの近代化改修か新型戦車の開発かは議論の余地があるが、現在新型戦車が研
究開発中で第4世代MBTとして世界が注目している点では、先鞭をつけて開発する意義は大きいと思われる。防衛庁
の構想する新型戦車のコンセプトは「情報通信技術革命に対応した高度のC4I機能の付加、火力、機動力、防護力の
向上、全国的な配備に適した小型軽量化、経費の低減、将来の能力向上に資するための拡張性の確保」としている。
まず、第3世代MBTを近代化改修した第3.5世代MBTに標準装備される様になった車両間情報データーリンクシステ
ムを搭載し、上級司令部及び部隊間での情報を共有し戦闘力を向上させる。火力は現有の44口径より長砲身の55口
径120mm滑腔砲を搭載するか、日本製鋼所で研究・開発中の140mm滑腔砲の何れかを検討中である。機動力は
先進型懸架装置と新規開発される小型セラミックスエンジン等が検討され高機動性を目指している。防御力は、より強
度の増した複合装甲が開発されるが、重量の兼ね合いから40t級の戦車で装甲防御力を犠牲にしては本末転倒となら
ない事を願う。全国的な配備に適した小型軽量化は、90式が50t級の重量で北海道以外の配備・運用は難しいという
点から本州・四国・九州には本格運用がされていなかった。新型戦車では装甲をモジュール装甲として取り外しが可能
な為、全国的な配備輸送が簡便となる。またモジュール装甲が被弾した場合など修理交換が迅速に行なえ、また新規
に開発された装甲を簡単に装着出来る利点が挙げられ、将来の拡張性が考慮されている。

防衛庁・陸上自衛隊HPより


防衛庁技術研究本部HPより







お知らせとお詫び
このページは、2001年5月6日に制作し、2004年1月23日に再更新
しました。当初ページの記載に当方のミスが有りご迷惑をお掛けしました。
また、ご指摘を頂いた方々にはこの場をお借りしてお礼申し上げます。

訂正箇所「装甲の解説」避弾経始の誤記を訂正
情報提供者:[ネクタリス・スラッガーII世]様

訂正箇所「車体の解説」コンパクト化の誤記を訂正
情報提供者:[KENJI]様


制作 管理人 Mirage




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