近未来最先端軍事テクノロジー




[量子コンピューター]

量子力学解説


■[半導体技術の限界]
現代のコンピューターの心臓部プロセッサの半導体では、マイクロエレクトロニクスを飛躍
的に向上させLSI(大規模集積回路)を高度に超高密度化した超LSIに進化し、さらに超超
LSIと発展させてきた。しかし半導体技術の進化速度を予測する「ムーアの法則」に当ては
めると2020年ごろには半導体は原子とほぼ同じ大きさまで小型高密度化されると予測さ
れています。 半導体は写真技術を応用し回路を写し込み、薬品などで回路以外の部分を
削除する方法(エッチング)で作られいるが、原子レベルまで微細な回路を形成する様にな
ると光を照射することによって化学的に彫ることで加工される回路が、光の粒子の大きさま
でしか彫れない事になる。つまり光の波長の限界が半導体の限界ともいえる。 大学ノート
に超極太のマジックペンで微細で複雑な回路を書き込む様なもので、ペンの太さはこれ以
上細くする事は出来ないが、ペンの太さ(光の波長)は実際には小さくする余地は残ってい
る。問題はペンの太さ(光の波長)では無く、原子レベルの世界では我々の世界の常識が
通用しなくなる量子力学の不可思議な現象が大きく作用するからである。





■[半導体の終焉]
現在のコンピューター、フォン・ノイマン型はあらゆる情報を二進数の数字に置き換えて計
算処理を行っているが、二進数は「0」と「1」の2つの数字だけで処理を行っている。  コン
ピューター内では、電気が流れなければ「0」、流れれば「1」と認識するが、半導体が原子
レベルにまで微細になると電流すなわち電子が量子力学でいう波の性質(*1)を現し「トンネ
ル効果」(*2)によって電子は絶縁体をすり抜けて隣の回路に移動してしまう現象が起こる。
こうなると回路の役目は果たさなくなり半導体としての機能が失われてしまうのである。 つ
まり半導体はこれ以上に小さくする事は出来ないのである。 ミクロの世界の力学を説明す
る量子力学によって半導体技術は限界を迎えたが、大きく立ちはだかる量子力学の壁を
逆に利用しようとするのが量子コンピューターの基本的概念だといえる。


(*1)波の性質
古典力学の創始者ニュートン以来19世紀まで光は干渉現象の観測から波と考えられてき
たが、アインシュタインが「光量子仮説」を発表してから光は波でもあり粒(粒子)である事が
分かってきた。 一方物質を構成する分子や原子レベルサイズの世界では、原子を周回す
る電子の状態は1個の粒子であると考えられていたが、フランスの物理学者ド・ブロイは電
子の状態を波である事を提唱した。オーストリアの物理学者シュレーディンガーは電子が波
である事を表した方程式を発表し、電子は粒子でもあり波の性質も持ち合わせていることを
証明した。 「シュレーディンガーの方程式」より導き出される電子の波の状態とは、電子が
波動性を持っているという事で、原子核の周回軌道をとる電子の波は確率的に原子の周り
を雲や霧の様に存在し観測してはじめて電子は粒になるとしている。 つまり正確な位置は
確率的にしか言い表せないとしている。

(*2)トンネル効果
我々の世界、マクロの世界では高さ1000mの壁の向こう側にボールを投げる事は、一流
のメジャーリーガーでも不可能です。 これは高さ1000mの壁を越えるだけの筋力(エネル
ギー)を人間が持ち合わせていないからです。 しかしミクロの世界では、量子力学によると
「シュレーディンガーの方程式」より越えられない壁の反対側にも電子が存在できる確率が
若干ですが残されています。 つまり、ミクロの粒子が通常では越えられないエネルギーの
壁を稀に通り抜けてしまう現象「トンネル効果」が発現する。ミクロの世界では高さ1000m
の越えられない壁でも孔が開いて壁の反対側にボールを投げる事が可能となる。もちろん
壁に孔が開くわけではないが、トンネルを通り抜けるさまなので、この量子効果を「トンネル
効果」と呼んでいる。 現在の宇宙論の中心をなしている「ビックバン理論」の創設者ガモフ
が提唱した事でも有名。 半導体の電子回路が原子レベルまで極微になると、電子は本来
の回路から逸脱し別の回路へ流出すると二進数のフォン・ノイマン型コンピューターは「0」
、「1」の処理が出来なくなり根幹から崩壊する。
赤の実線は金属内のエネルギ
ーの壁。 白の実線は金属と外
界境界線で緑の点線が電子の
確率分布。 金属の外側にも電
子が存在できる確率も少しある





■[量子コンピューター]
量子コンピューターは、1985年にイスラエル生まれの英オックスフォード大教授デビッド・
ドイチュによって基本的な理論が提唱された。量子力学を基礎にした重ね合わせ(スーパ
ーポジション)(*3)の原理を用いる事によって、従来のコンピューターの様に「0」、「1」の二
種類だけで処理していくのではなく、「0」と「1」が重ね合った状態を無数に用意して、それ
ぞれに情報を処理する事で一度に大量の情報処理が行える事が可能。 このため量子コ
ンピューターは、素子2つで2の2乗、素子3つで2の3乗、4つなら2の4乗のデータを同時
に出力でき、素子が32個あれば約40億のデータの同時出力が可能になり、1台でPC数
億台分に匹敵する想像を絶した性能を有する事となる。 量子コンピューターでは、量子力
学世界特有の物理法則を利用し従来のコンピューターとはまったく違ったアプローチで開
発される事となる。現在のテクノロジーはダウンサイジング(小型化)が主流で、今あるもの
をより高性能に小型化する事に主眼が置かれている。一方これからのテクノロジーは科学
雑誌「ニュートン」2001年1月号は「21世紀現実となる究極の夢」の中でナノテクノロジー
(*4)を上げている。 21世紀には物質を構成する最小単位の原子をコントロールする技術
によってボトムアップ方式に物づくりを行い既に限界を迎えつつあるトップダウン方式に取
って代わる新技術が主流となる。原子をコントロールするナノテクノロジーでは原子核の周
囲を周回する電子の有無や電子の周回軌道(遠近軌道)、原子核や電子のスピン(自転)
の上向き・下向きを「0」、「1」と入力させ、「0」、「1」の間に量子力学で言う重ね合わせ(
スーパーポジション)によって無数の超並列演算処理が行われ、結果導き出された無数の
雲状・霧状に広がる解は不確定性原理(*5)によって得られた最も正解の確率が高い解を
出力した瞬間に波の収縮(*6)が起こり解が決定する。 量子情報処理では「0」と「1」の状
態が共存している表現を1キュービット(quantum bit 量子ビット)とし、これを最小基本
単位としている。従来の情報処理、2進法の基数(バイナリー・ディジット binary digit)ビット
と対応しているが、区別する為に便宜上わけている。


(*3)スーパーボジション
電子は粒子と波の性質の両方を持ち合わせているが原子核を周回する電子の波の状態
はシュレーディンガーの波動方程式よりあらわされるが、波動関数の絶対値の2乗したも
のは「電子が存在する確率分布」をあらわしている。 「電子が存在する確率分布」は原子
核の周りを周回する電子の軌道が雲状・霧状になっており、我々が観測した瞬間に収縮
(*6)が起こり点(粒子)となって観測される。この電子の波、雲状・霧状の様は重ね合わせ
・スーパーボジションとみなされる。この時の電子は「ある場所にいる状態」と「別の場所に
いる状態」が重ね合わさって共存している状態でいる。誤解されやすいのは、電子が「A点
とB点に両方同時にいる状態」、「電子はA点かB点のどちらかにいるのだが、どちらかに
いるかは確率的にしか言えない」とは違う事、「一個の電子はA点にいる」状態と「同じ一
個の電子がB点にいる」状態が共存しているのが真の電子の状態で量子力学的スーパー
ボジションの考えである。

(*4)ナノテクノロジー(nanotechnology)
1ミリの100万分の1をナノメートルといい、1ミクロンより3桁も極微な世界の単位。 ナノ
単位で行われる超精密微細加工・計測技術をナノテクノロジーという。

(*5)不確定性原理
我々の世界(マクロ)ではボールの位置と速度は同時に観測することが可能であるが、ミ
クロの世界では電子の位置と速度は同時には観測できない。観測することによって電子
に光(光子)を当てると位置は分かるが電子と光子が相互作用し電子の運動状態が変化
してしまい速度が不確定となる。 逆に光子のエネルギーを弱めて相互作用の影響を小さ
くすると速度は分かるが、電子をうまくとらえられずに位置が不確定となる。マクロの世界
ではボールと光子の質量等の違いがあまりにも大きい為その誤差は無視できるが、ミク
ロの世界ではとても無視できない。つまり、観測という行為が自然状態に影響を与える為
、その結果が不確定になる事を不確定性原理という。

(*6)波の収縮
電子の波の状態は、シュレーディンガーの波動方程式より理論的に求められるが実際に
光を当てて人間が観測すると電子は一個の粒(粒子)として観測される。 雲状・霧状に広
がる電子雲の確率分布が観測によって一点に収縮する事は、「コペンハーゲン解釈」と呼
ばれ量子論の主流的な考えとなっている。 尚、観測した瞬間に波の収縮が起きるので実
際に電子雲(波)を見る事は不可能である。
原子核の周囲を周回する電子
の存在確率を点で示すと雲の
様に原子核を取り囲んでいる。

電子はこの電子雲のどこかに
存在し、人間が観測した瞬間
に電子雲が一点に収縮が起こ
り粒子として観測される。





■[軍事利用 量子コンピューター]
量子コンピュータを実現するには、原子核の周囲を周回する電子の有無や電子の周回
軌道(遠軌道・近軌道)、原子核や電子のスピン(自転)の上向き・下向きを利用した演
算素子、量子ビットを開発する事で、量子力学が適用される100ナノメートル以下の電子
を閉じ込める3次元の空間、量子ドットを作製する必要がある。 また、実用化へ向けて
未知のアルゴリズムを開発してゆく必要性がある等技術的にもハードルは非常に高い。
現在量子コンピューターの開発は米国・欧州・日本で行われており、日本では総務省が
2001年度から、量子情報通信技術の官民研究開発プロジェクトをスタートさせている。
科学技術振興事業団、理化学研究所、NTT、三菱電機先端技術研究所、NEC、富士
通研究所ナノテクノロジー研究センター、東芝の英国子会社、東芝欧州研究所のケンブ
リッジ研究所(ケンブリッジ市)等で開発が進められている。 米国では、この分野で最も
進んだ研究・開発を行っているロスアラモス国立研究所及びロスアラモス国立研究所非
線形研究センターで、量子コンピューター・量子暗号通信・量子テレポーテーションの開
発に一部成功している。


量子コンピューターが開発された暁には、現在解読不可能な暗号通信技術「公開鍵暗
号」はコンピューターによる素因数分解の処理速度が数億年から数十億年かかる事に
よって成り立っているが、量子コンピューターは素因数分解のアルゴリズムが1994年
にベル研究所のP.Shorにより既に開発されており、僅か数分で解読してしまう事が可
能となり、従来の暗号通信技術は瓦解する。 その為量子コンピューターが開発されれ
ば現実的な時間で暗号を解読できる有効な装置として活用される。

また、膨大なデーター解析が必要な核兵器実験シミュレーションや人工衛星の軌道修
正、偵察衛星の画像分析、弾道弾ミサイルの迅速な弾道計算、これらは数字を一つ増
やしただけで、超天文学的な量の計算を行わなくてはならない計算爆発が起きてしまう
が、量子コンピューターでは、瞬時に解析結果が得られる為、迅速な対応をとる事が可
能となる。

現在運用されている航空機や潜水艦、ミサイルやロケットに至るまで流体力学的風洞
実験を行わず、量子コンピューターだけで設計するまったく新しい航空機・潜水艦を開
発できる為、大幅なコストダウンと期間を短縮できる。

しかし、最も期待されているのは量子コンピューターによってもたらされるまったく新しい
概念のテクノロジーで、人類の平均寿命内(約75年)で現実的に、宇宙的・天文学的計
算を行えることで、想像もしなかった様な世界を創出できる。20世紀に誕生した量子力
学から半導体を開発し同じ量子力学によって半導体技術が限界を迎えた。人類は今よ
うやく量子コンピューターを開発する技術力を蓄積した。 しかしフォン・ノイマン型のコン
ピューターがもたらした恩恵は計り知れない。 今後開発される量子コンピューターによ
って新たに開発される遠未来の新型コンピューターは人類の叡智を超えたコンピュータ
ーになると予想される。量子コンピューターは核兵器・遺伝子工学と同じく人類にとって
第三のパンドラの箱となる諸刃の剣となる可能性がある。









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