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■[量子論の世界]

量子論は20世紀の天才物理学者アインシュタインが完成させた相対性理論と並び賞され
る物理学界の二本柱、双璧の理論である。 相対性理論は我々の世界、つまりマクロの世
界で通用する物質観だが、量子論は極微な世界(*1)、つまりミクロの世界で通用する物質
観である。物理学の世界では、マクロとミクロの世界の力学が異なり我々の住む世界(マク
ロ)で通用する力学の常識がミクロの世界では適用されない。ミクロの世界は我々の常識
を遥かに越えた不思議で神秘的な世界観が原理として存在している。天才物理学者アイン
シュタインは、終生量子論の原理に付いて疑問を抱いていたが、近年科学的な実験におい
て証明されている。

(*1)1ミリメートルの1000万分の1よりさらに小さな世界 分子よりさらに小さい世界



■[古典力学(ニュートン力学)と相対性理論]
17世紀のイギリスの天才物理・数学者アイザック・ニュートン(1642〜1727)は天体間に
作用する引力が重力と同じ事、万有引力を発見し主著「プリンキピア」で宇宙は絶対空間と
絶対時間で出来ているとした。 長らく物体の運動はニュートン力学で表していたが20世紀
に登場したアインシュタインは「特殊相対性理論」で空間は歪み時間は絶対ではなく早く流
れたり遅く流れたりするとして物理学の革命を起こした。 その後重力や加速度を付け加え
た「一般相対性理論」を発表し古典力学ニュートン力学の矛盾点を解決して完成させた。



■[光の正体とアインシュタインの光量子仮説]
物理学の世界では19世紀までは光の正体は干渉現象を起こす事から「波」であると結論
付けていた。しかし1900年にドイツの物理学者プランクは各種実験より「エネルギー量子
仮説」を発表し光は粒のような物であるとした。 これをヒントにアインシュタインは特殊相対
性理論を発表する3ヶ月前に「光量子仮説」を発表し、光の正体は波でもあり粒でもあると
してニュートン以来の光の正体に付いての大論争に決着を付けた。 この光の正体の不思
議な二重性は古典物理学では絶対に説明が出来ない大発見であり10年後量子論を誕生
させるきっかけとなる。



■[前期量子論]
量子論の創成期は当時物質の最小単位である原子がどのような構造をしているかを解明
する事から始まっている。原子の構造が次第に明らかになるにつれ、原子核の周囲を周回
する電子の存在が、これまで物理学の常識を超えた現象を起こす事が判った。この電子の
現象の説明に成功したのが、デンマークの首都コペンハーゲン生まれの物理学者ボーア(
1885〜1962)だった。ボーアは水素原子の構造研究から当時原子の構造と考えられて
いた「ラザフォードの原子モデル」の矛盾点を補完した。 当時の物理学では原子核の周り
を周回する電子はエネルギーを失いながら、らせん軌道をとってやがて原子核と衝突する。
原子核と電子が衝突すると物質は存在しなくなる為ボーアは古典物理学の常識概念を無
視して原子核の周回軌道をとる電子は決まった軌道のみをとり、原子核に近い軌道、遠い
軌道、その中間の軌道と、とびとび軌道を取りこのとびとびの軌道に移る時のみ電子はエ
ネルギーを放出するとした。ボーアは実際の物理現象にそぐわない物理法則は無視すると
いう大胆な発想によって原子の内部構造を見事に説明したが、水素原子のみにしか適用
されない欠陥があった。



■[量子論の完成]
(シュレーディンガーの方程式)
ボーアの理論は実際に実験から得られる水素原子の内部構造を見事に説明できたが従
来の物理学では説明ができない為新たな物理理論の構築が急務となった。フランスの物
理学者ド・ブロイは、アインシュタインの「光量子仮説」をヒントに逆の発想で電子は粒でも
あり波であるとしてボーアの理論の矛盾点を補完した。そして1912年にオーストリアの物
理学者シュレーディンガー(1887〜1961)は物質の波の状態をあらわしたシュレーディ
ンガー方程式(波動力学)を発表し、ミクロの世界の運動法則を説明する、量子力学の基
本的な理論となった。

(波動関数の確率解釈)
原子核を周回する電子の軌道はシュレーディンガーの方程式より波の状態で存在するが
実際に観測すると点で、つまり粒で観測される。 ドイツの物理学者ボルンはシュレーディ
ンガーの方程式の解「波動関数」の2乗が電子が存在する確率分布を示しているとした。
この事によって量子論では、原子核の周回軌道をとる電子の波は確率的に原子の周りを
雲や霧の様に存在し観測してはじめて電子は粒になるとしている。 つまり電子は波動性
を持っており正確な位置は確率的にしか言い表せないとしている。

(スーパーポジション)
原子核の周回軌道をとる電子の波は確率的に存在し、あたかも雲の様に広がって分布
しています。 我々が高校の物理の授業で習った原子のモデル、特に原子核を周回する
電子のモデルは実際には観測した時のモデルです。 この電子雲は正確にいうと1個の
電子がA点にいる状態と同じ1個の電子がB点にいる状態、そして同じ1個の電子がC点
にもいる状態が重なり合って共存している状態を「重ね合わせ(スーパーポジション)」と
呼んでおり、電子雲の正体である。 誤解されやすいのは、電子が「A点とB点に両方同
時にいる状態」、「電子はA点かB点のどちらかにいるのだがどちらかにいるかは確率的
にしか言えない」とは違う事、「一個の電子はA点にいる」状態と「同じ一個の電子がB点
にもC点にもいる」状態が共存しているのが真の電子の状態で量子力学的スーパーボジ
ションの考えである。

(波の収縮)
波動関数の確率解釈を取り入れて量子論の推進者ボーアは、確率的に霧状に存在する
電子は人間が光を当てて観測した瞬間に霧が収縮し粒になり位置を特定できると提唱し
これを「波の収縮」と呼んだ。波の収縮を我々の世界にあてはめると、今あなたの隣にい
る人はあなたが見ていない時には、雲状・霧状に存在しており、あなたが目で確認した瞬
間に雲状・霧状が収縮して隣の人は存在が確認できる。しかし、実際には超ミクロな波動
の為観測する事は不可能で、何より人間が光を当て観測した瞬間に収縮が起きるので、
雲状・霧状の幽霊みたいな人間を見る事は、あり得ないのである。

(神はサイコロをふらない)
量子論創成期の発展に貢献したアインシュタインと量子力学の基本理論を完成させたシ
ュレーディンガーは物質の存在を確率でしかあらわせないという考え方に猛反発し、神が
サイコロをふって確率的にしか物質の存在位置を決めるような事はしないという表現を多
用し物理科学の真髄は必ず決定論でなければならないと主張した。


■[不確定性原理について]
(電子の本質)
古典物理学では光は干渉現象の観測より波であると考えられていたがアインシュタインは
波でもあり粒でもあるとした。 量子論の初期でも電子は粒であると予測されていたがド・ブ
ロイやシュレーディンガーらによって波動性をもっている事が証明され、実際に干渉現象も
観測された。電子は光と同じく粒であり波動性を持っている事になる。

(不確定性原理)
量子論の中でも特に衝撃的だったのが、観測する事によって生じる「あいまいさ」である。
この、不確かさを発見し量子論を確立したのが、ドイツの物理学者ハイゼンベルク(1901
〜1976)だった。 ハイゼンベルクは別の方法でシュレーディンガー波動方程式と同じ物
を確立しており、そこから1927年にミクロの世界の逃れられないあいまいさを説明した不
確定性原理を発表した。不確定性原理とは、ある物質の位置と運動量を観測する時位置
を確定すると運動量は確定できず、運動量を確定すると位置は確定できなくなる。 つまり
ミクロの世界では、物質がその位置にいてどのくらいの速度で運動しているのかを正確に
は測定できない。あいまいさが残る事を意味するものだった。

マクロの世界でボールを投げると、ボールの位置と速度は同時に観測可能だが、ミクロの
世界では、観測対象の物質(電子等)があまりにも極微で光をあてて観測すると電子は光
(光子)の影響を受けて位置と速度を同時には観測できない。「電子の位置」を観測すると
「電子の速度」を確定できない。 光の影響を少なくして観測すると電子をうまく捉えられず
、速度は確定できるが位置を確定できない。 マクロの世界ではボールが光の影響を受け
る値があまりにも少ない為誤差は無視されるが、ミクロの世界ではこの誤差はとても無視
できない値なのである。


■[非局所的長距離相関]
(アインシュタインの反撃)
物質の存在を確率的にしか説明できない「波動関数の確率解釈」と、物質のあいまいさを
説明した「不確定性原理」は量子論の根幹として確立されたが、量子論に一定の理解を示
していたアインシュタインは核心部に付いては終生疑問を抱き続けていた。 この疑問を解
決するべく量子論の第一人者ボーアらに論戦を挑み「EPRパラドックス」を提示する。

(EPRパラドックス)
1935年にアインシュタインはポドルスキーとローゼンの2人の物理学者と連名で量子力
学の疑問を追及したパラドックス論文を発表する。このパラドックスは3人の頭文字を取っ
て「EPRパラドックス」と呼ばれる。 このパラドックスは難解なので簡単に説明すると、1個
の電子を入れた密閉された箱を仕切り板を中に入れてAとBの2つの箱に分けます。量子
力学では箱の中を観測していない時には、1個の電子は波の性質を現しますから、電子
はAの箱にいる状態と同じ電子がBの箱にいる状態が重なり合っている(スーパーポジショ
ン)状態です。 ここでAの箱の中を観測した瞬間には量子力学でいう「波の収縮」が起こり
電子が存在しているか、存在していないかが初めて分かる。 アインシュタインはこの思考
実験でBの箱を地球から1億光年彼方の星に持っていった場合を想定しました。この実験
では、地球に残ったAの箱に1個の電子が有れば1億光年彼方のBの箱の中には電子は
存在せず、逆にAの箱に電子がなければ1億光年彼方のBの箱に電子が存在すると分か
るはずです。 しかし、1億光年彼方のBの箱の中は見ていないのに箱の中の状態が分か
るのは何故か? 量子論では、地球に残っているAの箱の中を観測した瞬間波の収縮が
起こり、その情報が瞬時に1億光年彼方のBの箱の中の状態を確定させたと説明できる。

アインシュタインは、自らが完成させた相対性理論中の「光速度不変の原理」で光の速さ
(秒速約30万キロ)を超えて物体が移動したり情報が伝達する事は有り得ないとしている
為、1億光年彼方のBの箱に情報が瞬時に伝わる事は無いと主張した。アインシュタイン
はこの遠隔作用を「幽霊の様なテレパシー」と呼んで忌み嫌った。 長らくこの「EPRパラド
ックス」は多くの物理学者によって議論され続けたが、1982年にフランスの物理学者ア
スぺによって遠隔作用がある事が実験によって証明された。 1個の電子の重なり合った
状態は、例え何億何百億光年離れていようが切り離す事の出来ない関係が明らかになり
これを「非局所的長距離相関」と呼ばれる。


(シュレーディンガーの猫)
シュレーディンガーの波動方程式を完成させ量子論の発展に多大な貢献を果たしたシュ
レーディンガーは1933年度にノーベル物理学賞を受賞したが、その後の量子論の発展
には、大きな不満を抱いていた。 アインシュタインが、よく述べた「幽霊の様なテレパシー
、確率でしか予測できない物理法則」と同じ考えだった。1935年にシュレーディンガーは
量子論の最大の難問となり現在でも説明が出来ないパラドックス、「シュレーディンガーの
猫」を発表し量子論の抱える問題点を指摘しました。 このパラドックスは鉄の箱の中に放
射性物質と放射線検出器に連動した毒ガス発生器を入れて、箱の中に一緒に猫を入れ
た思考実験を行うもの。放射性物質は1時間に原子核崩壊を起こして放射線を放出する
確率は50%で、放射線が放出されれば検出器に連動した毒ガスが発生し猫は死にます
。放射線が出なければ毒ガスは発生せず猫は生きている事になります。 量子力学では
原子核崩壊を起こす状態と起こしていない状態が重なり合っている状態ですから、それと
連動している猫の生死も「生きている」状態と「死んでる」状態が鉄の箱の中で重なり合っ
て共存している状態、つまり「半死半生」状態です。 1時間後鉄の箱を開けて観測した瞬
間に猫の生死が確定しますが、それまでは箱の中の猫は、「生きていながら死んでいる」
状態です。シュレーディンガー曰く「箱の中を観測する前から猫の生死はどちらかに決ま
っているはずで、半死半生とか、観測したとたん生死が収縮してどちらか一方に決まるの
は明らかにおかしい」と述べている。 「半死半生」の状態から観測した瞬間に急激にどち
らか一方に決定される量子論的結論は21世紀の今日になっても明確な説明がなされて
いない、最大の難題となっている。




■多世界解釈(パラレルワールド)
「シュレーディンガーの猫」のパラドックスは人間が観測する行為そのものにも疑問を投げ
かけました。 そもそも観測すると一点・粒として観測されるが、波動方程式からは物質が
波としての性質を持ち合わせており観測した瞬間収縮するとした「コペンハーゲン解釈」は
量子論に都合の良いつじつまあわせの様にみえました。 実際に20世紀最高の数学者に
して現代コンピューターの原理を考案したフォン・ノイマン(1903〜1957)は「シュレーデ
ィンガーの波動方程式」から「波の収縮」を導き出す事は、数学的に原理上不可能な事を
証明した。 量子コンピューターの基本的な理論を提唱した英オックスフォード大教授デビ
ッド・ドイチュは「シュレーディンガーの猫」は生きているか、死んでいるかのどちらかでしか
ない、半分生きていて半分死んでいる状態など有り得ない」としている。彼は観測した瞬間
に生きている猫がいる世界と、死んでいる猫がいる世界にそれぞれ枝分かれすると述べ
、あらゆる量子論的観測の結果は「多重宇宙論」で解釈できるとしている。「コペンハーゲ
ン解釈」の「重ね合わせ」の状態の数だけ宇宙(世界)は、枝分かれしていくというもので、
「シュレーディンガーの猫」のパラドックスでは、「生きている猫を見ている私がいる世界」と
「死んでいる猫を見ている私がいる世界」の二つの世界に枝分かれし、それぞれの「私」は
この世界が唯一の世界だと認識し枝分かれした世界(宇宙)は物理的に孤立している為、
別の世界の「私」を見ることも干渉する事も不可能である。観測するたびに枝分かれし、そ
れぞれの世界が同時進行していく解釈を「多世界解釈(パラレルワールド)」という。この解
釈は量子力学の不可思議で難解な性質を理解できる一つの解釈として受け入れられてお
り、人間が決して見ることの出来ない「波の収縮」をある程度説明している。









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