日本のミサイル防衛システム(BMD)

■[日本の弾道ミサイル防衛システム 概要]


1998年8月31日、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が新型弾道ミサイル「テポドン1号」と見られる
ミサイルを発射、第一段目は日本海に着水、第二段と第三段目は日本の東北地方を飛び越え、太平洋
上に着水した。
北朝鮮はミサイルではなく、人工衛星であると発表しているが海上自衛隊のイージス艦こんごう級の捉
えた飛翔コースの分析により、ミサイルは地球の引力圏を脱出出来ない速度で打ち上げられた事により
中距離弾道ミサイルと判断している。
北朝鮮の弾道ミサイルが、日本本土を越えて太平洋上に着水した事は安全保障上の観点からも大きな
衝撃を持って受け止められ、日本のミサイル防衛システムの導入のきっかけともなった。 日本政府は、
1998年11月に他国の弾道ミサイル基地の情報を収集する目的で偵察衛星の導入を閣議決定(小渕
政権)し、12月25日には安全保障会議にて米国のミサイル防衛システムを導入する為の研究を共同
で行なう方針が了承され閣議決定を経て平成11年度予算に計上されている。
2003年12月19日にミサイル防衛の導入を閣議で正式決定し日米豪で共通システムが配備される
予定となった。





■[日米共同研究]

米国(当時のクリントン政権)は、戦略核ミサイルと第三世界に拡散する弾道ミサイルの脅威に対処する
為に、米本土(アラスカ、ハワイを含む)を防衛する国家ミサイル防衛構想(NMD:National Missile
Defence)と世界中に展開する米軍と同盟国軍を防衛する為のTMD構想(戦域ミサイル防衛)を打ち出
している。NMDは、主に戦略核ミサイル、大陸間弾道弾(ICBM)をターゲットとしており宇宙空間を高速
で飛来するミサイルを撃破する技術的なハードルが非常に高く、MIRV(個別誘導再突入体)の囮弾頭
(デコイ)を判別する技術は確立されていないのが現状である。TMDは、IRBM(中距離弾道弾)、TBM
(戦術・戦域弾道ミサイル)をターゲットとしている為、NMDより技術的ハードルが低く、また既存の現有
システムに改良を施して使用するため開発・実用化が短期間で行なわれNMDと比較して先行して戦力
化が行なわれている。NMDとTMDは、ブッシュ政権になってからBMD(弾道ミサイル防衛システム)に
統合・移行され、陸海空の三軍は独自にミサイル防衛システムの構築を推進している。
日本は、TMDの海上配備型ミサイル防衛システムの共同研究に参加する事を表明しており、主にイー
ジス艦に搭載されるスタンダードミサイルSM−3のノーズコーン、運動エネルギー弾頭、高性能赤外線
シーカー部、第二段ロケット・モーターの開発を担当する事になっている。





■[日本の弾道ミサイル防衛システム]

日本は、米国のTMD(戦域ミサイル防衛)の海上配備型、NTWD 海軍戦域広域防衛(NTWD Navy
Theater Wide Defense)で使用される、イージス艦搭載可能なスタンダード・ミサイルSM−3を導入し
、それでも打ちもらした弾道ミサイルは、航空自衛隊のパトリオットPAC−3で迎撃する方針となっている。
防衛庁は、弾道ミサイル防衛(BMD)については、大量破壊兵器及び弾道ミサイルの拡散に対処する為
「中期防衛力整備計画(平成13年度〜平成17年度)」(平成12年12月15日安全保障会議及び閣議決定)
において、本格的な導入を決定している。
政府の見解は、「弾道ミサイル攻撃に対して我が国国民の生命・財産を守るための純粋に防御的な、
かつ、他に代替手段のない唯一の手段であり、専守防衛を旨とする我が国の防衛政策にふさわしいもの
であることから、政府として同システムを整備することとする。」としている。

日本へ飛来する弾道ミサイルの防衛は、発射前にミサイル及び発射基地を攻撃する手段と発射された
弾道ミサイルを撃墜する二者択一だが、日本は専守防衛政策をとっている為後者の方策を取らざろう得
ない。 2003年3月28日に、日本初となる情報収集衛星(偵察衛星)が鹿児島県の宇宙開発事業団
(現宇宙航空研究開発機構)種子島宇宙センターからH2Aロケット5号機で打ち上げられ光学衛星と
レーダー衛星の2基が運用をされている。2回目(2003年11月29日)は打ち上げ失敗したが、偵察
衛星の導入によって事前に発射される情報を収集する手段を獲得し、外交努力によって事前に発射当事
国に警告を行ないつつ、ミサイル防衛体制を整える事が可能となる。防衛庁長官の見解としてはミサイル
に燃料が注入された時点で我が国への発射意図を確認するとしている。 発射された弾道ミサイルは、
発射直後の上昇加速段階(ブースト・フェーズ)が終了した時点で着弾予想地点を割り出し、日本の領域
内か否かが判明した時点で自衛隊法第76条が適用され防衛出動が行なわれる。
日本をターゲットとするIRBM(中距離弾道ミサイル)は、射程が1000〜5500km、再突入時の速度
がマッハ8〜21、飛行時間10〜20分(発射地点射程数値より・着弾点首都東京)となっている為、
海上自衛隊では、日本海側にイージス護衛艦を配置し、航空自衛隊のパトリオットPAC−3は日本海
側の九州・本州に各所配置される。

2004年3月24日に防衛庁のシンクタンク、防衛研究所は、年次報告書「東アジア戦略概観2004」を
発表し、この中で北朝鮮による弾道ミサイル攻撃を想定した上で、我が国に対する発射準備を整えつつ
あるミサイル基地を攻撃する事も法的には可能と指摘している。
専守防衛に徹してきた防衛政策上の戦略転換を政府に促す狙いがあるとみられ、「法理上、武力を行使
して相手国のミサイル基地を破壊することができる」と結論づけている。
日本の敵基地攻撃については、1956年に「座して自滅を待つべしというのが、憲法の趣旨とするとは
考えられない」との政府答弁があり、また1965年2月の政府見解では「我が国へのミサイル攻撃を受
けた際の相手基地攻撃を自衛権の範囲として認める」としている。しかしながら自衛隊には、敵基地攻撃
を行う装備を保有しておらず、現段階では、対地攻撃用トマホーク巡航ミサイルの導入を検討している。
これらの敵基地攻撃用の装備は、我が国への明確な攻撃意図をどの様に判断し、情報を確定するかの
問題をはらんでおり、正確な目標(ミサイル基地)の把握には高度な情報収集衛星の運用が不可欠とな
っている。自衛的敵基地攻撃手段は、日本の安全保障上の高度な政治判断を有する為、当サイトでは
是非に付いては言及を避け、日本政府と国民の判断に委ねるものとし、ミサイル防衛を補完する手段が
上述した様にある事を紹介する意味で掲載する事とした。





■[海上自衛隊 イージス護衛艦こんごう級/改こんごう級]

海上自衛隊の保有する4隻のイージス護衛艦「こんごう級」の後継となる7700t級「改こんごう級」では
日米共同研究で開発されるスタンダード・ミサイルSM−3BlockIIが装備される予定。 日本のミサイル
防衛は、明らかに我が国を目標としている事が判明しなければ防御行動を起こせない欠点があり、結果
弾着地点が予測可能となるブースト段階が終了する時点で迎撃行動を開始する。SM−3は、イージス
護衛艦に装備されている対弾道ミサイル用に改修されたSPY−1Dフェーズド・アレイ・レーダー(走査・
探知距離約500km)によって中間・終末誘導が行なわれ、最終的には高性能赤外線シーカーを内蔵
した弾頭部を切り離し、自身が運動エネルギー弾頭となって弾道ミサイルに直撃(Hit−toーKill方式)し
撃破する。 SM−3本体は、3段式のロケットで構成され、一段目はMk72、二段目Mk104、三段目
Mk136で、その上に運動エネルギー弾頭KW(Kinetic Warhead)が装着されている。 KWは、軽量
大気圏外投射体LEAP(Lightweight Exo−Atomospheric Projectile)と呼ばれ、高性能赤外線セン
サーで捉えた弾道ミサイルの赤外線を感知しながら、姿勢制御スラスターで正確に軌道修正を行なって
直撃する物である。





■[航空自衛隊 警戒管制部隊FPS−3/FPS−XX]

日本海側の各所に設置されているFPS−3は、主に領空に接近する航空機叉は弾道ミサイルを探知
する為のフェーズド・アレイ・レーダー。 米国のAN/FPSフェーズド・アレイ・レーダーは、弾道ミサイル
専用の施設だが、日本では防空用に使用されている為、走査・探知距離を短くしてその分近距離での
探知能力を向上させている。防衛庁技術研究本部が現在開発中のFPS−XXでは、弾道ミサイル防衛
を視野に入れた遠距離での走査・探知・追尾能力を向上させた、新型を2007年頃配備する予定。
FPS−3も弾道ミサイル防衛システムに対応したソフトウェアと改良が施されFPS−3改に改修される
予定となっている。





■[航空自衛隊 高射部隊パトリオットPAC−3]

海上自衛隊のイージス護衛艦が、迎撃出来なかった弾道ミサイルを最終的に打ち落とす為の地対空
ミサイル・システムで、対航空機用のPAC−2を改良した対弾道ミサイル専用のPAC−3 ERINT
(射程拡張型迎撃ミサイル)を米国より導入し配備する。 PAC−3では、大気圏内に再突入してくる
高速の弾頭体を直撃(Hit−toーKill方式)する事を目指しており、NBC(核・生物・化学)弾頭を完全
に破壊する為に73kgの高性能炸薬を搭載しており、万が一に備えて近接信管も装備している。






■[航空自衛隊 BADGE System(Base Air Defense Ground Environment)]

バッジシステムは、警戒管制部隊(地上レーダー施設等)、早期警戒機E−2Cホークアイ、早期警戒
管制機E−767AWACSから得られる情報を統合する、全国規模のオンライン・リアルタイム・ネット
ワークシステムで自動化された警戒管制組織となっている。現在は、防空任務が主任務だがミサイル
防衛システムの導入によって、弾道ミサイルの早期警戒任務を付与され、システムの改修とFPS−X
Xの導入を今後開始する。 バッジシステムのBMD指揮官には、航空総隊司令官が指揮・統制を行
なう。新型バッジシステムは、航空自衛隊の警戒管制部隊、各種早期警戒機、海上自衛隊のイージス
護衛艦が入手した弾道ミサイルの発射・航跡・飛翔データーを統合・分析し、弾着地点が我が国と判明
次第各種情報を海上自衛隊のイージス護衛艦と航空自衛隊の高射部隊パトリオットに配信し、迎撃
任務を支援する。





■[BMDの今後]

日本を目標とする中距離弾道ミサイルは、北朝鮮のノドンやテポドンが上げられるが、ノドンは、射程が
約1000〜1300kmで弾頭重量が800kg〜1000kg搭載可能、約150基前後を配備していると考
えられており日本列島をほぼ射程に収めている。テポドンは、射程が約2000kmの3段式のロケットで
沖縄を含めた日本の領土を全て射程内としている。これらの中距離弾道ミサイルは、航空自衛隊の新
型バッジシステムの各種センサーが発射後約1分後にブースト段階にある弾道ミサイルを初めて探知し、
迎撃態勢を取る事となるが、発射から着弾まで約7分の猶予しかない。発射直後の弾道ミサイルを探知
するシステム、例えば宇宙空間から赤外線を感知する早期警戒衛星の導入を視野に入れた早い段階の
発射情報の入手手段が不可欠となっている。現段階では、米国の早期警戒衛星(DSP)等の情報に頼
らざろう得ないのが現状である。
2004年3月22日米国国防省は、9月より日本海にイージス駆逐艦アーレイ・バーク級を派遣常駐させ
る事を決定し、ミサイル防衛に関する情報のリンク・共有化を日米で緊密に行なうとしている。また、米国
本土に飛来するICBM用のレーダー施設の日本配備も打診している。今後日本のミサイル防衛は、米国
との情報の共有化を行い、より高精度に弾道ミサイルを探知し、イージス護衛艦とパトリオットPAC−3の
2段階で迎撃する事となる。BMDシステムの導入には、およそ1兆円の予算が必要と見積もられており
、システムの技術的課題は、米国内でも疑問視する専門家も多い。また、ミサイル防衛の配備は、米国
が仮想敵とするテロ支援ならず者国家だけで無く、自国のミサイルが無力化する恐れのあるロシアや
中国を過剰に刺激する事になり、結果的に国際的なミサイル軍拡が再燃する危険性をはらんでいる。









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