米海軍特殊部隊SEAL支援運用潜水母艦 SSN-774 ヴァージニア



USS Virginia SSN-774 & ASDS


■[ヴァージニア級一番艦ヴァージニア PCU SSN-774]

ヴァージニア級は、米海軍の新型攻撃原潜でロサンゼルス級(SSN688/688I)及びシーウルフ級(SSN21)
の後継艦にあたり、冷戦終結後の世界情勢に対応するべく遠洋での対潜水艦戦では無く地域紛争に対応
した沿海域作戦能力と対地攻撃能力、特殊部隊支援作戦に特化した最新鋭の潜水母艦である。
1991年の湾岸戦争後、ユーゴやコソボ、ソマリア等多発する低劣度の地域紛争に加えて2001年9月11日
に米国を震撼させた同時多発テロによって新たな脅威が発生し、アフガニスタン及びイラクと対テロ戦争
に傾倒する米国では、特殊部隊の存在が有効なプレゼンテーションを発揮すると、その支援と運用を中心
とした設計思想でハードウェアの開発と改良を行うこととなる。特筆すべきは、今まさに米国海軍が要求し
欲する性能を有する潜水艦をリアルタイムに就役させる米国の先見の明である。 本艦が計画された冷戦
終結直後より、現在の様な対テロ戦争の有効な戦術にまだ特殊部隊の存在が重要視されていない中、
今後米国の脅威と成り得る非正規戦及びテロリズムに対処できる事を前提として、設計開発されたヴァー
ジニア級は、冷戦の終結に伴い世界情勢に対応出来なくなった為建造がキャンセルされたシーウルフ級
とは対照的である。

ヴァージニア級の主任務及び目的は、米海軍特殊部隊の輸送と回収で、その為の沿海・浅海域での作戦
遂行能力と対地支援能力を持つ打撃力の付与である。設計・開発段階から特殊部隊員の輸送と回収を
行える事を考慮されており、その為のあらゆる装備を搭載している。また潜水艦にとって最も危険な沿海
・浅海域での行動を容易にする為の対機雷戦能力も大幅に向上させている。

Photo by General DynamicsElectric Boat


Photo by US.NAVY
建造中のヴァージニア級1番艦。
ヴァージニア級の解説と諸元
[SSN-774 ヴァージニア級攻撃原潜]


太平洋艦隊潜水艦部隊のホームページに
掲載されているヴァージニア級3番艦ハワイ
の紹介。→http://www.csp.navy.mil/





■[米海軍特殊部隊SEALの輸送と回収]
ヴァージニア級では、作戦海域までSEAL隊員を輸送し海上・海中より投入、特殊作戦終了後隊員を回収
し帰還する。または、航空機及び地上から極秘に潜入した隊員を海上で回収する等の作戦に従事する。
隊員の輸送と回収には、セイル後方の兵員居室(Crew berthing)内及び魚雷室等に合わせて40名の特殊
部隊員(指揮官、作戦士官、通信オペレーターを含む)が搭乗可能で、ヴァージニア級で専用に装備された
ロックアウト水密装置室(Lockout airlock chamber)で特殊部隊員を潜望鏡深度(70ft)で艦外・艦内に収納
する事ができる。 ロックアウトトランク(Lockout Trunk)は、注排水装置でトランク内に注水し閉塞ハッチ
より海中に特殊部隊員を投入する事ができる。 トランク内には、最大で9名の隊員が収納可能で注水後
海水で満たされると海中に出撃可能。逆に帰還後はトランク内の下部に設けられた専用タンク内に排水が
行われると隊員の回収は完了する。ロックアウトトランクは、セイル直下の発令所直後に設置されており
前部と後部のトリム(水平バランス)タンクにより微妙な水平を保持する潜水艦にとって、注水による影響
が最も少ないその重心位置に設置されている。
上部は、隊員を収納するロックアウト水密装置室で、その下部にトランク内の海水を排出する為のタンク
及び緊急時の圧搾空気予備タンク、さらにその下部に注排水装置と圧搾空気ポンプ及びMBT(メイン・
バラスト・タンク)排水装置が備え付けられている。ヴァージニア級は、ロックアウト機構の装備で迅速に
特殊部隊員の海上・海中への投入と艦内への収容が行える様になった。

Photo by General DynamicsElectric Boat

特殊部隊員は、ロックアウトトランク内に注水
されトランク内が満水となり、海中と同圧に
なった時点で閉塞ハッチを開放し艦外に出る。

艦内に戻る場合は、トランク内にまず注水が
行われた後閉塞ハッチを開いてトランク内に
戻りハッチを閉鎖。続いて床に開いた排水溝
よりトランク内の海水を床下の排水タンクに
排水し、同時に消音装置付の空気充填装置
でトランク内にエアーを注入する。
排水が完了し、トランク内がエアーで満たされ
るとロックアウトトランクから艦内に入る事が
できる。



■[ASDS(Advanced SEAL Delivery System)新型SEAL部隊輸送システム]
ASDS(新型SEAL部隊輸送システム)は、SDV(SEAL Delivery System)の新規改良型小型潜航艇で低温
海域での行動が可能な様に密閉式艇内に乗員2名と完全武装の特殊部隊員8名が搭乗可能。
沿海・浅海域に停泊した潜水母艦より発進し、浅深度域から海浜及び海岸まで特殊部隊員を輸送できる。

その他に、DDS(Dry Deck Shelter)ドライ・デッキ・シェルターも装備可能で小型潜航艇(SDV)1艇をデッキ
カプセル内に収納可能。DDSの装備では、ロックアウトトランクの9名と合わせてSEAL隊員を同時に20名
前後を艦外に投入可能となっている。SDV(SEAL Delivery System)はASDSと違いオープン式の為海水温
に影響され易く、また潮流の激しい海域や高速での潜航行では隊員の体力を著しく消耗する為、今後は
ASDSに順次変更される。

Photo by Northrop Grumman Corporation


Photo by Northrop Grumman Corporation
ASDS(新型SEAL部隊輸送システム)
全長: 65 feet
重量:: 60 t
速力: 5〜8 knots(海中)
潜航深度: 200+ feet/約60m(最大)
行動距離: 100+ nm(海里)
定員:乗員2名/特殊部隊員8名

舷側面の前後に配置された長方形(グレー色)
は上方にパネルが跳ね上がり、補助推進装置
のThruster(スラスター)が収められている。
スラスターは、前後の潜舵を使用しなくても
ASDSの深度変更と方向転換が可能となって
いる。



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Photo by US.NAVY
海軍の海中試験センターでテスト中のASDS。
トレーラーに搭載されて移動している。


ASDSの艇尾、主プロペラとプロテクティブ・
リング。主プロペラは6翼ハイスキュードタイプ
となっている。


Photo by US.NAVY

Photo by US.NAVY
2003年7月1日にハワイ沖でASDS1艇を搭載し
評価試験を行うUSS SSN-772 Greenville(改
ロサンゼルス級)

左の画像の拡大画像。ヴァージニア級も同様
にASDSを1艇搭載する事になる。



Photo by US.NAVY

Photo by US.NAVY
同じくUSS SSN-772 Greenvilleを上方より撮影
した画像。

左の画像の拡大画像。



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ハワイ沖で洋上・潜航テストを行うASDS。画像で
は倒立式潜望鏡と多用途アンテナマストが立っ
ている状態。


改ロサンゼルス級のメインデッキ(主甲板)上
に設置されたASDS用ハッチ/固定装置。中央
の白い円筒状の物がハッチで、その前後の台
が固定用の装置。


Photo by US.NAVY

USS SSN-700 Dallasに搭載されているDDS。
ダラスは、特殊部隊を支援・運用するための
浅海行動用機雷探知ソナーを艦首上部(艦首
方向の突起物)を設置し、DDSの後方に艦内
よりDDSに収納するSDVの視察ができるTV
カメラ(左舷側長方形)を設置し各種改修され
ている。

Photo by US.NAVY

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ラファイエット級James K.Polk(SSBN-645)に搭載
されているDDS。本艦は1999年に退役したが、
ロサンゼルス級より船体幅が広くDDSを並列に
2基搭載可能となっていた。
注目したいのは、ハッチ部のヒンジが右開きと
左開きの2タイプがある事。SDV等を搬出・収納
する場合の利便性が考慮されている。

DDSの欠点は、船体に直接固定式の為、設置
工事に時間を要する事。ヴァージニア級では、
DDSと同様の機能を持つロックアウト・チャンバ
ーが艦内に設置している為現段階では装備さ
れないとの見方。




Photo by US.NAVY

Photo by US.NAVY
DDSより搬出中(出撃中)のSDV。DDS後方には
ガイドレール(台座)が出されてスムーズな搬出
が行われている。

SDVに搭乗中のSEAL隊員。




Photo by Northrop Grumman Corporation

Photo by US.NAVY
SDVの操縦席イメージ。 前方に並列で2名の
隊員が搭乗出来る。


水上航行中のSDV。






■[PCU SSN-774 ヴァージニアの特殊部隊専用装備]
ロックアウトトランクの水密閉塞口(開閉ハッチ)は、構造上口径が狭く隊員個人での出入りしか考慮され
ていない設計となっているが、作戦に従事する特殊部隊員の大型の各種装備類は艦外の専用トランク内
External Stowage Lockers Store Special Forces Equipment(特殊部隊装備用外部格納ロッカー)が設け
られており、そこに収納できる。装備用外部格納庫は、セイルの右側面側に4つのトランクが設置されおり
海中より艦外に出た特殊部隊員は、海中で装備用外部格納庫のドアハッチを開閉し各種装備品を装備
する。装備用外部格納庫内のトランク内には、海浜・海岸への輸送手段となるCRRC(Combat Rubber
Raiding Craft)ゾディアック社製ゴムボート及び船外動力機、無線通信・衛星通信用コンテナ、
OP(監視・情報収集活動)用観測機材、重火器類(対戦車火器・対物ライフル・Demolition(破壊工作用
装備)、各種弾薬類)等が収納可能。

Photo by General DynamicsElectric Boat

Photo by General DynamicsElectric Boat
ヴァージニア級では、セイルに特殊部隊専用
の格納ロッカーを設置している。 ロッカーの
パネルドアは海中より特殊部隊員の操作でも
開閉が可能となっている。

建造中のヴァージニア級セイル右側面。 赤い
矢印が特殊部隊装備用外部格納ロッカーのドア
パネルで4つ設置されているのがわかる。





■[特殊部隊支援システム]
海上から特殊部隊を投入するヴァージニア級では、緊急時には本艦自体が前線指揮所を兼務すること
となり、その為の特殊作戦指揮システム(Operations Command System)が搭載されている。システムの
全容は現段階では判明していないが、特殊部隊の陸上作戦行動の支援を行う為の通信システム、特に
上級司令部との交信中継を行う衛星通信暗号システムの搭載とATWCS(Advanced Tomahawk Weapon
Control System)新型トマホーク発射管制システムで円滑に支援を行う。
分離モジュール・デッキ構造(MIDS:Modular Isolated Deck Structure)で設計されたヴァージニア級は、
従事する作戦に対応して柔軟に設計デザインのの変更が可能で、特殊部隊員を60名輸送できる専用の
兵員輸送潜水艦の計画も行っている。
増大するテロの脅威に対応すべく、今後就役する米海軍のヴァージニア級は、特殊作戦に従事できる
能力と性能を兼ね備えることになる。

Photo by US.NAVY

Photo by US.NAVY
潜水艦用無線通信用ステーション。ヴァージニア
級も同様のシステムが搭載され、以前の様に
深度及び速力に制限されない帯域幅とフローティ
ングアンテナで地上部隊の支援を海中より行う。


特殊部隊の地上支援打撃力として艦首にVLS
を設置しTLAM(対地攻撃型トマホーク)を12基
装備している。
TLAMは、特殊部隊の支援要請、情報収集に
よって得られた情報を元に目標を攻撃する。







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