[日本の情報収集衛星II]

■情報収集衛星の概要はこちらに掲載してあります
message 軍事トピック特集]→「日本の情報収集衛星I」(2002年3月2日掲載)





情報収集衛星(光学センサー搭載)イメージ






情報収集衛星(SAR搭載)イメージ




■[情報収集衛星打ち上げ2003年3月28日]
日本初の情報収集衛星(偵察衛星)は3月28日に鹿児島県の宇宙開発事業団種子島宇宙センターから
H2Aロケット5号機で打ち上げる予定で、打ち上げに成功し衛星を予定軌道に投入すれば48時間後には
太陽同期準回帰軌道(極軌道)に乗り、3ヶ月の衛星機能確証テストを経た後本格的な運用を開始する。
今回の打ち上げと衛星運用を統括する事になる、首相官邸内に設けられた内閣情報収集衛星推進委員
会(委員長福田康夫官房長官)は3月28日打ち上げられる2基(光学・レーダー)の衛星と平成15年度の
夏ごろに打ち上げ予定の2基の衛星と合わせて2004年3月までに4機体制とするとしている。 今後政府
は、大規模災害及び大事故対策に情報収集衛星を活用するとともに、北朝鮮のミサイル発射実験及び動
向を注視する為に日本の専守防衛政策を逸脱しない範囲で運用するものとしている。





■[情報収集衛星概要]
運用される情報収集衛星は2種類で光学センサー搭載(光学衛星)と合成開口レーダー搭載(レーダー衛
星)を各2基づつ運用される。光学衛星は、デジタル画像を撮影しレーダー衛星は目標上空が雲に覆われ
たり夜間の場合光学衛星に代わって撮影を行うものである。

パンクロ・モード

マルチスペクトル・モード

SAR(合成開口レーダー)

画像:「宇宙開発事業団(NASDA)提供」



●(光学センサー搭載衛星)
光学衛星に搭載されるセンサーは恐らく2種類。パンクロ・モードとマルチスペクトル・モードが使用される。
パンクロ・モードは光の波長が0.51〜0.77ミクロンの緑色帯から赤色帯までの可視光帯域を感知して
画像を作成するセンサーで衛星の進行方向に対して前方・直下・後方の異なる3方向の画像を同時に観
測できるステレオ撮影が可能で高精度の地形データを取得でき、地形の起伏や建造物の凹凸を詳細に捉
える事が出来るので偵察・監視衛星で主に使用される。 メインセンサーのHRV(High Resolution Visi
ble Imaging Instrument)は高解像度可視光撮影器と呼称されCCD(Charge Coupled Device)電荷
結合素子の集合体で電子デジタルカメラと同じである、現在ではCCD素子数を大幅に増やして航空写真
に匹敵する高解像度を得ている。 マルチスペクトル・モードは色の三原色(赤・青・緑)と赤外線域帯の濃
度が異なる4種類のモードで撮影された画像をコンピューター処理して合成する方法で、色々な反射光出
力をコンピューター処理により多角的に捉える事が可能な為、巧妙に儀装された地上の目標物も詳細に偵
察する事が出来る。

情報収集衛星に搭載されるパンクロ・モードセンサーは、同じく今年打ち上げ予定の陸域観測技術衛星「A
LOS」の「PRISM」センサーの高精度バージョン。 マルチスペクトル・モードセンサーは1996年に打ち上
げられた地球環境プラットフォーム技術衛星みどり(ADEOS)、昨年12月H2Aロケット4号機で打ち上げら
れた環境観測技術衛星みどりII(ADEOS-II)に搭載されていた「AVNIR−II」(4バンド帯)センサーの高性
能な物が使用される。「PRISM」センサー」の解像度は2.5mで「AVNIR−II」センサーは8〜10mとなっ
ており、情報収集衛星ではパンクロ・モード1m以下、マルチスペクトル・モード5mまで性能を向上させたセ
ンサーを搭載する。



「PRISM」センサー 諸元(パンクロ・モード)*1
観測波長帯:0.52〜0.77μm(前方視−直下視−後方視)
ステレオ視B/H比:1.0
信号対雑音比:70
地上分解能(瞬時視野角):2.5m(3.75μrad)
空間周波数伝達特性:0.20
観測幅:35km
ポインティング角:+-1.5deg(cross track)


画像・諸元データー:「宇宙開発事業団(NASDA)提供」


「AVNIR−II」センサー 諸元(マルチスペクトル・モード)*2
観測波長帯:1ch 0.42〜0.50μm  2ch 0.52〜0.60μm
        3ch 0.61〜0.69μm  4ch 0.76〜0.89μm
信号対雑音比:200
地上分解能(瞬時視野角):10m
空間周波数伝達特性:1〜3ch0.25、4ch0.20
観測幅:70km
ポインティング角:+-40deg(cross track)

*画像中央上部の金色の断熱シートで覆われているのが
  「AVNIR−II」センサー

画像・諸元データー:「宇宙開発事業団(NASDA)提供」



●(SAR搭載衛星)
合成開口レーダー(Synthetic Aperture Radar)は、レーダー波を発射し目標(地表物)に当たって反射し
てきたエコーのドップラー変移(反射波の周波数の変化)を数値化し画像に応用するドップラー・ビーム・シャ
ープニングを利用した昼夜全天候型レーダーである。 情報収集衛星に搭載されるSARは日本初の宇宙用
合成開口レーダーとなった、資源探査衛星1号機搭載合成開口レーダ(JERS-1 SAR)と2003年打ち上げ
予定で現在製作中の陸域観測技術衛星「ALOS」搭載フェーズド・アレイ・L-バンド帯合成開口レーダ(PA
LSAR)が技術応用される。JERS-1 SARは分解能約18m、PALSARは分解能10m前後となっており、
これらのSARをより高精度化したセンサーが今回の情報収集衛星に搭載される予定で、空間分解能は1〜
3mとなる。



「PALSAR」センサー 諸元(合成開口レーダー)*3
周波数:Lバンド帯
偏波:HH or VV(optionHV or VH)
地上分解能:10m(2Looks) 20m(4Looks)
観測幅:70km
オフナディア角:18〜48deg
信号対アンビギュイティ比:25dB
雑音等価後方散乱係数:−25dB

画像・諸元データー:「宇宙開発事業団(NASDA)提供」
*1*2*3
各種センサーの諸元は陸域観測技術衛星「ALOS」に搭載される予定のデーターで、情報収集衛星に搭載
されるセンサーはこれよりも高機能・高精度で高空間分解能が高いものが開発、搭載される。センサー諸元
は宇宙開発事業団(NASDA)ホームページより一部抜粋しました。




●情報システム・地上支援システム
情報収集衛星の開発メーカーの三菱電機では、鎌倉製作所(神奈川県鎌倉市)通信機製作所(兵庫県伊丹
市)等で開発製作が行われており、同社で現在開発・製作が行われている陸域観測技術衛星 「 ALOS 」の
技術が先行して応用されている。情報収集衛星に搭載される予定の各種センサー等の諸元データーは安全
保障上の理由で一切が公開されない極秘事項だが、少なくとも「ALOS」と同一システムで開発されるとみら
れている。 今回は「ALOS」より高解像度の画像を電送しなければならず以前に打ち上げられた地球環境プ
ラットフォーム技術衛星みどり(ADEOS)、環境観測技術衛星みどりII(ADEOS-II)の情報伝達システムをフィ
ードバック高速化を図っている。 (ADEOS)では126Mbps、(ADEOS-II)は66Mbpsで陸域観測技術衛星
「ALOS」では約140Mbpsを達成する見込みで、情報収集衛星ではこれ以上のデータ電送速度を目指して
いる。データー電送速度の向上の為、従来の地表観測衛星で使用されていた、全指向性の低利得アンテナ
に代え、アンテナビームを電子的に連続走査でき高利得で電力効率にも優れているアクティブ・フェーズド・ア
レイ・アンテナを採用する。 データー電送系の高速化は、情報収集衛星を太陽同期準回帰軌道(極軌道)に
投入するという難しい作業を高精度に制御出来るとともに、高度約500kmの低軌道を維持する為の高安定
衛星姿勢制御技術、高精度衛星位置決定技術を容易にするものと考えられている。

地上支援システムは、内閣情報調査室を統制する内閣情報官の下に内閣衛星情報センター(市谷)が設置
され情報の一元的集中管理が行われる。 全体の総合管理を行うのは運用・情報管理部門で衛星の追跡管
制を行うのは管制部門、衛星から送信される画像を受信処理する受信・画像処理部門、画像の解析判読を行
う画像解析・判読部門から構成されており、北浦衛星情報センター(茨城県)で情報収集衛星の画像を受信す
る。 その他に、北浦衛星情報センターのバックアップとして受信域をカバーする為苫小牧衛星情報センター
(北海道)・阿久根衛星情報センター(鹿児島)も設置されている。 また衛星打ち上げ時の軌道投入を支援す
る為オーストラリアのバースに一時的に支援施設が設置され軌道投入後撤去される。
内閣衛星情報センター
「内閣官房」HP提供
陸域観測技術衛星「ALOS」
「宇宙開発事業団(NASDA)提供」
衛星追跡管制用可搬型地上設備
三菱電機HP提供





■衛星打ち上げシステム
3月28日、鹿児島県の宇宙開発事業団種子島宇宙センターから打ち上げられる情報収集衛星はH−2A5
号機(H−IIA F5)より打ち上げられる。 H−2Aは、1号機以降、4回連続して打ち上げに成功し世界の衛
星打ち上げビジネスに再び返り咲いた。ロケットの打ち上げ能力(ペイロード)と打ち上げ費用は世界最高水
準で、衛星を除いた打ち上げ費用はおおよそ85〜95億円。

画像:「宇宙開発事業団(NASDA)提供」

H−IIAは、失敗が相次いだH−IIの改良型で新たに設計されたまったく新しい機体である。 本体は全長53
メートル、直径4メートル(衛星格納部は5.1メートル:4号機)、重量約290トンで標準機体では本体の左右
に14.9mの改良型固体ロケットブースター(SRB−A)を取り付ける。本体はロケットの「第1段」、「第2段」
と衛星などのペイロードを入れる「フェアリング」の3つの部分に分かれており、第1段ロケットには、H−IIのL
E−7エンジンを改良したLE−7Aエンジンを使用し、第2段にはH−IIのLE−5Aエンジンを改良したLE−5
Bエンジンを使っている。この標準機体で、高度約3万6千キロの静止衛星軌道に重さ2トンのペイロード(積
み荷)を打ち上げることができる。 また「固体補助ロケット(SSB)」を4本取り付けると、静止トランスファー軌
道への打上げ重量を5トンに増やせる事が出来る。 









ページ制作にあたっては、「宇宙開発事業団(NASDA)」ホームページの陸域観測技術衛星 「ALOS 」の資料
・画像を参考にさせて頂きました。 「宇宙開発事業団(NASDA)提供」と明記してある画像の著作・使用権は全
て「宇宙開発事業団(NASDA)」に帰属しています。画像の転載・二次使用はご遠慮ください。
「宇宙開発事業団(NASDA)」ホームページ




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