「四国府」のすすめ



      映像ソフト作りを振興せよ

 世の中にかくもチャンネルが増えて、映像ソフトが足りないという声が頻しきりなのに、地方で映像ソフト作りに新規参入する企業があるかというとそうではない。
 
 たまに四国を舞台にしたドラマがあると、テレビの画面を食い入るように見てしまう。自分に近しいことばがストーリーの綾を紡いでいくのを聞くのは、至福の時だ。
 東京人には、この感覚はなかなか分かってもらえない。
 
 四国で作られる映像ソフトの圧倒的多数は、1度放送すれば終
しまいの「ローカルニュース」である。
 四国4県の県紙のテレビ欄で調べてみると、4県の地元放送局と自社製作の定時番組は ――

<四国共通>
NHK 17:00-18:00 「てれごじ。」

<愛媛>
NHK   「イブニングえひめニュース」
南海放送(日本テレビ系) 「特急! なんかいニュースプラス1」
テレビ愛媛(フジテレビ系) 「とにかく愛媛」
あいテレビ(TBS系) 「キャッチあい」
愛媛朝日(テレビ朝日系)「ニュースBOX」

<高知>
NHK  「6時です・とさ情報市」
高知放送(日本テレビ系) 「こうちNOW」
テレビ高知(TBS系) 「イブニングKOCHI」
さんさんテレビ(フジテレビ系) 「さんさんスーパーニュース」

<香川>
NHK  「いきいき香川」
西日本テレビ(日本テレビ系) 「ワイドニュースプラス1」 
瀬戸内海テレビ(テレビ朝日系)「KSBスーパーJチャンネル」
   
<徳島>
NHK  「情報交差点とくしま」
四国テレビ(日本テレビ系) 「おはようとくしま」
(7:00 - 8:00)
                  「フォーカス徳島」 (18:20 - 19:00)

 四国4県でずいぶんと差があるように見える。
 実際には、香川の人は岡山の電波を、徳島の人は大阪の電波を楽しんでいる。だから、愛媛新聞で「あいテレビ」の番組が書いてあるところに、四国新聞(高松)なら「山陽テレビ」(岡山)、徳島新聞なら「毎日テレビ」(大阪)の番組表が出ている。
 実は、隣県の電波に頼りにくい愛媛や高知のほうがかわいそうで、愛媛ではテレビ東京系のチャンネルが見られないし、高知ではテレビ朝日系とテレビ東京系の死角となっている。
 
     
郵政省の失政

 郵政省は、民放局を県単位で設置するように定めて、この大昔の政策をいまだに変えていないのだが、このあおりを食って、あきらかな情報格差の被害者となるのが地方の小県の住民である。

 東京の人はそんなことに関心ゼロ。NHKは唯我独尊。それぞれの県紙は既存の民放に出資しているから、競争相手となる新たな民放を増やしましょうなどというキャンペーンはやらない。
  今となっては珍妙至極の郵政省の政策は、善意に解釈すれば「各県の特色を活かして、県民参加の地元密着型の放送局ができればよい」ということだったのかもしれない。
 しかし、現実には、そういう「理想」が実現したのはケーブルテレビの世界である。そして、これまた郵政省からエリア規模に箍
たがをはめられて、制作できる番組もいわば大企業の「社内テレビ」に毛の生えたていどのものだ。
 あるていど内容のある番組を作るには、対象となる住民が多くなければ引き合わない。

 一方、県単位の民放はといえば、夕方の30分から1時間ほどの「ローカルニュース」枠にはまる番組を作り、地元企業のテレビ広告をはめ込むことが唯一の付加価値のように見える。これまた企業規模から言って、それ以上のことは難しい。

 かたや衛星放送でチャンネルが増えて、「映像ソフトが足りない」と うわ言のように言われているのに、実際の放送ソフト作りは東京・大阪に極端に偏っている。

 21世紀もこのままでいいはずがない。
 『週刊東洋経済』(平成12年11月25日号)で、国際大学の池田信夫教授が興味深い論説を書いている。

 今後の放送を、UHF帯(500〜800メガヘルツの電波)を使う「無線インターネット」と、全国一律放送の「衛星放送」の2つに集約する。「最新の無線技術を使えば、毎秒数十メガビットの広帯域通信が光ファイバーよりもはるかに低い価格で実現でき」るのだという。
 
 「電波は規模の経済が大きく、零細な地方民放が重複して電波塔を建てるのは無駄である。放送局はコンテンツに特化し、電波はNHKか無線通信会社に売却するのが得策だ」と池田教授は説く。NHKも、インフラ部門と制作部門に分離する。そして日本全国の無線インターネットの放送インフラを「NHKコミュニケーションズ」という新会社に集中させる。

《映像が無線インターネットにのれば、インフラを持たなくても誰でも放送ができるようになるから、設備投資や運用に巨額の経費がかかる電波はもはや「利権」ではなく、資金力のない局にとっては「重荷」だ。》

《政府がいくら「超高速インターネット網」に税金をばらまいても、コンテンツ(特に映像)がなければ、光ファイバーは文字どおり無用の長物だ。広帯域インターネットで最も希少な資源はコンテンツであり、制作・編成能力を持つテレビ局にとっては、これはチャンスなのである。》

      
これからの四国をどうするか

 
この流儀でいくと、四国のテレビ局はどうするか。
 地方の各民放の機能は次の3つである。
@ 放送インフラ機能(電波塔と放送設備)
A 番組制作機能(地方ニュースプロダクション)
B 広告編成機能(地元企業広告代理店・プロダクション)
このうち@がなくなり、AとBの会社ができるが、県単位で分かれていてもメリットがない。四国という単位で数社の番組制作プロダクションと広告プロダクションに統合していくのが望ましい。

 番組制作プロダクションには、ローカルニュースや「俳句」「遍路」ものだけでなく、「ドラマ」や「海外取材番組」も作ってほしい。松山市道後を劇場の街にして、ドラマ制作の活力もそこから生み出していきたい。
 期待したいのがさまざまな「教育番組」の制作だ。この分野なら、地方政府も資金を提供しやすい。近い将来、学校や家庭で、子どもの能力と特性に合わせた教育番組をインターネットで呼び出して勉強するという時代がきっと来る。まじめな四国人の放送プロダクションにはうってつけの分野だと思う。
(平成13年1月1日)